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作家のダニエル・キイスさんが1959年に発表した小説を原作としたミュージカル『アルジャーノンに花束を』が2023年4月27日(木)から上演されます。
本作は、2006年に日本初演を果たし、その演技に対し「第31回菊田一夫演劇賞」を主演の浦井健治さんが受賞。さらに、浦井さんは2014年の上演の際にも「第22回読売演劇大賞最優秀男優賞」を受賞しました。
今回、9年ぶり3回目の主演を務める浦井さんに、本作に懸ける想いや役柄について、そして「NorieM」恒例のファッションについてもお話を聞きました!!
―改めて、今回の出演が決まったお気持ちを聞かせてください。
嬉しい気持ちと共にプレッシャーも感じました。ですが、今回、キャストを一新してのトライになります。演出家もスタッフさんも変わるので新しい取り組みとして、これまでの公演に敬意を示しながら作品に臨んでいきたいと思いますし、今はワクワク感でいっぱいです。
―初演、再演は、ご自身の中で手応えがありましたか？
劇場がお客さまの涙で溢れるようなそんな空間になっていると感じました。すごく集中して、感情移入して観てくださったお陰ですし、すごく幸せな経験でした。それを経験させていただけたのは僕の財産になっていると思います。自分の中でもとても大きな作品でした。
―そうした経験をする中で、ご自身の中ではどんな成長があったと感じていますか？
歌ももちろんですが、身体表現という面でも、様々なバリエーションをこの作品から学べたと思います。例えば、姿勢や声色の使い方もそうです。すべてがすごく貴重な経験でした。
―浦井さんが演じるチャーリイは、32歳で幼児なみの知能しかないパン屋の店員です。そんなチャーリイはキニアン先生やストラウス博士と出会い、ある手術を受けることで劇的な変化を遂げていきます。初演、再演ではどんなところを意識してチャーリイを演じてきましたか？
これまでは、“死にゆくこと”を受け入れて、そしてその中でも懸命に生きるということを大切にしていました。特に再演では、人との繋がりを求め、“自分を認めて、友達になって欲しい”という気持ちだけで動いている純粋なチャーリイが周りの人たちに影響をもたらしていくという物語の中で、いかに人間らしさを浮き彫りにするかが自分の中で大きなテーマでした。今回は、稽古に入るにあたって(2023年版の演出を手がける)上島(雪夫)さんと、ウォレン養護学校という施設の異様さと今世界中が抱えている問題がリンクしているのではないかというお話をさせていただきました。それから、劇中で歌う「アルジャーノンに花束を」という楽曲には、「死んでいくさまを受け入れるしかない」という歌詞がありますが、それはこのコロナ禍にも通じるものがあると思います。今、上演することで社会に対する問題提起にもなると感じていますし、それが演じる上でも大きなポイントになると思います。
―今作ではチャーリイの二面性を演じ分けることが必要になると思いますが、そうした難しさもある役なのでは？
そうですね。しかも、チャーリイはただ二面性があるというだけの役ではないんです。物語が進むにつれ、心の機微や人間性が炙り出されていき、周りの人たちの対応に動揺したり、心を揺れ動かされたりしながら、２つのチャーリイの間で揺れ動くんです。実験の過程や様々な効能によって自然と変化してしまうこともあれば、意図的に行ったり来たりしていることもあるので、ただ二面性があるだけではないんですよね。人格が変わるわけではないので、あくまでも同じ人物なんだという意識を持って演じなければいけない、集中力が必要な役だと思います。
―極端にどちらかに振るというよりは、すべてが地続きなんですね。
地続きですし、実験前のチャーリイはずっと存在していないといけない。物語の冒頭と最後ではチャーリイは変わっていてはいけないんです。その変わらないチャーリイを見て、お客さまはハッとするんだと僕は思います。そこでチャーリイの問題に直面するんです。
―なるほど。今回、9年ぶりに本作に出演しますが、この9年間で、浦井さんご自身が一番変わったと思うところはどこですか？
9年前よりも、何事に対しても力を抜けるようになったと思います。作品を演じる上で、「自分がどう演じるか」ではなく、「戯曲をどう伝えるか」に今は興味があるんです。そういう意味で、演技も作品作りもだいぶ変わっているかもしれませんね。
―それは自然と変化していったものなんですか？
自然とです。たくさんの人と出会いは大きいですね。
―では、この作品を通して、観客の皆さんにどんなことをお届けしたいと思っていますか？
それぞれが問題にしていること、大切にしたいことは異なると思いますが、その人生の縮図や生まれてから死んでいくまでが描かれているのがこの作品だと思います。チャーリイの周りの人たちの苦悩や罪も描かれているので、心にダイレクトに響くのではないかと思いますミュージカルの醍醐味は、ファンタジーとして何も考えず、ただ感じながら観ていただくことにあると思いますが、今作ではそれに加えて、明日も頑張ろうと一歩、歩みを進めていただけるような作品にしたいと思っています。
―最後に、公演を楽しみにされているお客さまにメッセージをお願いします。
ミュージカル『アルジャーノンに花束を』は、今回5回目の上演となります。こうして何度も再演される愛される作品に携われることを光栄に思いますし、今回は2023年バージョンとして新たにみんなで一緒に作り上げていきますので、楽曲も含めて、至宝の宝石箱のような、キラキラした作品になると思いますので、ぜひとも劇場に足をお運びください。
▶︎浦井健治さんのファッション事情◀︎
―今日のお衣裳のお気に入りのポイントを教えてください。
今日は、シックなものを選びました。
―シンプルなファッションがお好きなんですか？
派手なものも着ますよ。ただ、最近は、シンプルな色味やきれいめなファッションの方が良い場合も多いので、そういう場ではシンプルなものを着るようにしています。そこに少し色味を足したり、珍しいデザインのものをポイントとして付け加えています。
―浦井さんにとっての「癒し」は？
カーテンコールです。舞台という時間を一緒に過ごし、お互いに「ありがとう」という気持ちを交換できる場だと思うんです。大きな拍手をいただくと、そこからやはり、お客さまの想いが伝わってきますし、僕からも「ありがとう」の気持ちをお届けできる時間だと思っています。今、やっとコロナ禍の終わりも見えてきていますが、本当にこの3年間は、お客さまには大変な苦労があったはずです。マスクをしての観劇もそうですが、規制退場があり、お金を払って観にきてくださっているのに、こちらからのお願いに皆さん協力してくださる。そうやって支えてくださることは本当に嬉しいことですし、それが伝わってくるカーテンコールは僕にとってかけがえのない時間です。
―5月21日からは「浦井健治 Live Tour 2023～VARIOUS～」も予定していますが、ライブではよりお客さまの反応や想いをダイレクトに感じる瞬間も多いのでは？
そうですね。拍手もそうですし、マスクをしていても笑顔を感じます。僕は、舞台ももちろんですが、ライブもすごく素敵な空間だと思います。昨年、SOPHIAの日本武道館のライブに行ってきたのですが、まだ声が出せない時期だったので、普段はコールアンドレスポンスのある曲を演奏した時に、松岡充さんが「心の声で！聞こえているよ！」と言ったんです。僕はそれに心が震えてしまって。観客は誰も歌っていないけれども、みんなの声が確かに聞こえるんですよ。感動しましたし、素晴らしい世界がそこにあるなと思いました。5月からの僕のライブは、どのような状況でできるのかまだ分かりませんが、来てくださるお客さまがその時間を楽しんでもらえれば僕は幸せだなと思います。
―浦井さんが輝き続けるためにしていることはありますか？
何でしょうね（笑）。輝き続けるって自分で言うのは恥ずかしいですけど、舞台には立ち続けたいですね。どんなに辛いことがあっても、体が大変でも、それでも舞台に立てば笑顔になれる。大変なことが無いに越したことはないですけど、舞台に立つ姿をずっとお見せしたいなとは思います。
【profile】
浦井健治／Kenji Urai
1981年8月6日生まれ。東京都出身。
2000年『仮面ライダークウガ』敵の首領役で俳優デビュー。その後、2004年ミュージカル『エリザベート』ルドルフ皇太子役に抜擢。以降、ミュージカル、ストレートプレイ、映像作品と幅広いジャンルの作品に出演。第22回読売演劇大賞最優秀男優賞、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞＜演劇部門＞など数々の演劇賞を受賞。
現在、自身が描いたキャラクターがアニメとなり「キャラダチミュージアム～ MoCA ～」(フジテレビ)内のショートアニメ「きょうのうらけん」の声を担当するなど多彩な活動を展開。
浦井健治さん公式ホームページ https://uraikenji.jp
公式Instagram https://www.instagram.com/kenji_urai_staff/
公式Twitter https://twitter.com/Kenji_Staff
photo:Tsubasa Tsutsui／styling: Naoki Yoshida／hair&make-up: Junko Yamazaki／ interview&text:Maki Shimada
【公演概要】
■タイトル
ミュージカル『アルジャーノンに花束を』
■日程・会場
東京公演：2023年4月27日(木)～5月7日(日) 日本青年館ホール
大阪公演：2023年5月13日(土)・14日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
■原作 ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」(ハヤカワ文庫)
■脚本・作詞・オリジナル演出 荻田浩一
■演出・振付 上島雪夫
■音楽 斉藤恒芳
■出演
浦井健治
大山真志 長澤風海 若松渓太 大月さゆ 藤田奈那 渡来美友
東山義久 北翔海莉
■公式ホームページ
(2023,04,11)
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