2017年の発足以来、毎年6月にオリジナル作品や国内外のオペラや文 学作品を題材とした多彩な作品を制作・上演している日本舞踊未来座の第6回公演=最(SAI)=が、6月3日から6月5日まで国立劇場で上演されます。
最の字には“最“前線で活躍する日本舞踊家による”最“高の一作、そして今秋に立て替えのため閉館する現国立劇場での”最“後の公演という意味が込められています。
女性をテーマにした本作では、アメノウズメノミコト、かぐや姫、静御前、出雲阿国、芸妓・遊女、女方といった日本の歴史のおいて舞い踊り人々を魅了してきた女性たち「舞姫」が描かれます。カリスマ的存在の「舞姫」に出会う現代人の「マイ」を演じる藤間紫さんに本作への意気込みと日本舞踊の魅力、そしてNorieMならではのファッション事情についてお話しをうかがいました。
ー6月3日から5日まで上演される「舞姫」。どんな作品にしたいと考えていらっしゃいますか?
構成・演出の西川扇与一さんが、女性の舞というのはこんなにも美しいものなんだということを前面に出し、観ていただきたいとお話しされています。稽古を重ねてどんどん変化していくと思いますが、舞姫=女性が主役なので、女性の美しさを表現できたらと思っています。
ーNorieMでは今回初の日本舞踊の作品のご紹介になります。昨年春に三代目を襲名し、さまざまな分野で活躍の場を広げている藤間さんが改めて感じる日本舞踊の魅力とは?
動きの美しさ、所作の美しさがまず一番にあるような気がしています。どんな踊りでも指先まで行き届く美しさや所作の美しさと、どんなに激しく動いても軸がぶれずに背筋が凛としている美しさが日本舞踊にはあると思います。
ーずっと続けてらっしゃる日本舞踊が他のお仕事に活かされているなと感じることは?
お着物を着る作品、時代劇などは、舞踊をやっていて良かったなと思います。着物を着て、そこにいるだけでも着慣れていないと居心地がわるく見えてしまうことがありますが、そこにいるだけ、佇まいだけで美しく見えるというのは、日本舞踊の経験がお仕事で役に立っていると思います。ストレートプレイの舞台でも、地に足をつける、そこに存在するということは難しくて、それも日本舞踊を経験していると自然とその場にいられるというというところがあり、よくご覧いただくお客さまに“やっぱり違うね”って言っていただくこともありますね。
ー藤間さんにとってこの「舞姫」はどんな作品ですか?
舞踊家たちは国立劇場で公演をし、私も舞台に立ち、踊っていましたので、その場所がなくなるということで、今回のこの公演を盛り上げていきたいです。国立劇場は今年で無くなってしまいますが、未来に、そして次に繋がるような舞台にしたいなと思っております。
ー本作で藤間さんが演じるマイという女性はどんな女性でしょうか?
今回の「舞姫」は、オムニバス形式で話が進んでいきます。その場面場面の点と点を線でつないでいくような役割がマイにはあります。それは現代から始まり、過去へさかのぼって時代をたどってきて、そしてこれから先の未来に向かっていくストーリーテラーでもあります。その場面、場面を盛り上げていくというか、踊りの精神を次に繋げていくという役割を担っています。すごく重要な役ではあるけれども、今回の脚本の齋藤雅文さんが、主役はマイかもしれないけれど、それぞれの役の舞踊家さんが自分が舞姫だと思って、その場面場面を作っていって欲しいとおっしゃっていました。出演者の全員が役を超えて、舞踊家としての自分と重なる部分があるような気がすると考えています。それぞれが主役、みんなで作り上げていきたいです。
ーこの作品で楽しみにしていることはどんなことですか?
一番楽しみにしているのはお客さまの反応です。どう思ってくださるのかなっていうのが一番楽しみです。
ーお客さまがどう思ってくださるのかという部分が作っていく上での原動力になりますか?
そうですね。日本舞踊も生ものなので、実際に生でご覧いただき、そしてその反応を見たいですし、どうだったか聞きたいですね。やはり観に来てくださるお客さまのために作品を作っているので、どう感じてくださるのかが一番楽しみですね。
ー今回は3日間の公演です。公演ごとの反応も楽しみですね!!
日本舞踊ですと、1回のみの公演というのも多く、こうして興行として公演回数が多くできる作品は意外と少ないんです。お芝居は1週間、2週間公演をしていくと日々進化していきますが、舞踊は1回のみなので、その1回に懸ける、失敗したらそれで終わりというところも日本舞踊の良さだったりしますが、今回は、3日間あるので、日を追うごとに変わっていくのかなと思うとそこも面白いと思います。
ー見どころと意気込みをお願い致します。
芸妓の場面では人間国宝(重要無形文化財保持者)である井上八千代さんの指導による京舞 があるのも見どころのひとつです。そして女性の踊りのかっこよさが一番の見どころ、伝統ある劇場自体も楽しんでいただきたいです。
ー藤間さんご自身の国立劇場でのエピソードは?
小さい頃から国立劇場の舞台に出させていただいて、7年後に完成するまで、“舞踊家さんたちはどこで踊ればいいんだろう”というくらいに、お世話になり、思い出のある劇場です。私が初めて出演した未来座の公演も国立劇場でしたし、本当に先輩方からいろいろ教えていただいた場所でもあり、襲名の公演も国立劇場でしたので、私にとっては思い出深い場所だと思います。
ー今回この作品をご覧になる方へ何か事前に準備することはありますか?
まっさらな状態で来ていただいても大丈夫です。もし、事前に準備をと思われている方は、ホームページに日本大学芸術学部の小林教授が今回登場する舞姫たちについてのコラムを書いてくださっているので、それをご覧になって観に来てください。SNSも随時アップしていますので、お稽古風景をご覧いただくと作品の雰囲気を事前に感じていただけると思います。
ー最後に本作を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
日本の舞踊をこんなに堪能できる公演はめったにないと思いますので、ぜひ観に来ていただけたら嬉しいです。ご覧いただきましたらぜひSNSで感想を発信してください。#日本舞踊協会 #舞姫 でぜひ投稿ください。皆さんの感想も楽しみにしています!!
▶︎藤間紫さんのファッション事情◀︎
ー最近のお気に入りのファッションは?
夏はワンピースが多くて、タイトな服よりオーバーサイズのものを着ることが多いですね。
ーこの春夏の推しアイテムは?
この夏もワンピースをたくさん着たいと思っています。あと、夏になると明るい色を着たくなりますね。差し色で青とか原色を入れたくなります。冬は黒とか暗い色が好きですね。
ー今日の衣装のお着物はどんなイメージで選ばれましたか?
外での撮影もあると聞きましたので、爽やかな色がいいなと思って選びました。
ー日本舞踊の伝統のある世界で気負いやプレッシャーを感じることは?
最近は昔ほどプレッシャーに感じることがなくなりました。まったくプレッシャーや気負いがないというのも良くないと思うので、楽しみたいと思ってやっています。どの現場も楽しんだ方がいいじゃないですか!!そう思っていたらプレッシャーや気負いを感じなくなっていました。自然体でいること、変に肩肘張らずにいることが自分も疲れない秘訣ですね。
ー役者としての作品も多い藤間さんにとって演じるということ、役者としてのお仕事は?
楽しいですね。様々な価値観を持っている人と出会えることも自分にとって刺激になりますし、こんな感情になれるんだと、役を通して新しい自分に出会えることもあります。そういった気づきや学びを自分の引き出しに蓄えて、また次へ次へと表現の幅を広げていきたいと思っています。
【profile】
藤間紫/Murasaki Fujima
1994年8月3日生まれ。東京都出身。
幼少より祖母・初世藤間紫に師事。7歳で祖母と共に歌舞伎座にて初舞台。2021年紫派藤間流家元・三代目 藤間紫を襲名。2022年1月国立大劇場において襲名披露公演を開催。日本舞踊協会主催公演や新作公演など多数出演。また女優としては本名である藤間爽子で舞台やドラマ等で活動している。
未来公演には、は第1回公演「当世うき夜猫」(花柳輔太朗演出)のゆき役、第3回公演「檜男=ぴのきお=」(西川扇与一演出)のぴのきお役に続く3回目の出演となる。本作では各時代の舞姫たちと出会う中で自身も舞姫へと生まれ変わる現代の少女マイを演じる。
■公式ホームページ
https://fujimasawako.com/home
■公式Instagram
https://www.instagram.com/fujimasawako_official/
photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Akiko Yamashita
【STORY】
さまざまな時代に現れた舞姫たち。それぞれに美しく、凛とした光を放ちながら人々を魅了し続けてきた。 神に捧げ、民衆を鼓舞し、あるいは男たちを翻弄し、 時にはたったひとりの愛しい人を想いながらひっそりと舞う。 各時代を彩った舞姫たちを「日本舞踊が常に生き、未来へと生き続けていく」象徴として描く舞踊絵巻。
【公演概要】
■タイトル
第6回日本舞踊未来座=最(SAI)=『舞姫』
■日程・会場
2023年6月3日(土)〜6月5日(月) 国立劇場 小劇場
■出演
藤間紫 花柳昌太朗 藤間蘭翔 花柳喜衛文華
藤間翔央 水木扇升 若柳杏子
泉秀彩霞 花柳寿太一郎 花柳基 ほか
■主催
公益社団法人日本舞踊協会
■公式ホームページ
https://kagurazaka.fun/miraiza_sai
(2023,06,01)
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