2023年10月に新国立劇場で交互上演される『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』の制作発表会見が2023年8月31日(木)に行われ、岡本健一さん、浦井健治さん、中嶋朋子さん、ソニンさん、立川三貴さん、吉村直さんら全19名のキャストと演出の鵜山仁さんが登壇しました!!

シェイクスピアの戯曲の中でも上演回数が多くなく、登場人物も屈折したキャラクターが多いことから“ダークコメディ(暗い喜劇)”とも呼ばれている『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』の二作。同じテーマを持つ、表裏一体のような戯曲で、シェイクスピア作品の中では数少ない女性が物語の主軸となる作品です。その二作品が、今回、日本初の交互上演されます。

新国立劇場では、2009年の『ヘンリー六世』三部作から12年に亘り、「シェイクスピア歴史劇シリーズ」を上演してきました。今回の公演は、その「歴史劇シリーズ」で演出を手掛けてきた鵜山さんと、これまでのシリーズでお馴染みの俳優陣が再集結して作り上げます。

会見では、まず初めに、鵜山さんが「この作品を上演することになった背景には、人間は必ず過ちを犯すけれども、愛が救済できるかという大きなテーマがあります。それと同時に、『演劇は世界を救済できるのか。演じることによってものの見方が変わる、感じ方が変わるのか。さらには、宇宙のシステムの様々な過ちを浄化できるのか』という大テーマが控えています。これを14年来、この仲間たちと表から裏から重層的にやってみようというのが、今回の企画です」と本作を上演するに至った想いを明かしました。

 

続いて、岡本さんは、「このお話を聞いて、一番惹かれたのは、この(歴史劇シリーズの)カンパニーでもう一回、できるということと、タイトルです。今回、この二つの作品で、若い人から年配まで演劇を楽しんでいただきたいです。(劇中には)権力者も市井の人も出てくるので、日本の政治家の方に劇場に足を運んでもらうと、色々な過ちや発見があると思います。生きていく上で大事ことが、たくさん詰まっている作品になっています」と挨拶。

 

浦井さんは、「この座組みに初めて参加させていただいた時のことを今、思い出していました。渡辺徹さんや中嶋しゅうさんなどたくさんの諸先輩方が一緒に並んで、『浦井って誰なの?』とまるで公開処刑のようにここに座らせていただき、僕自身も何もできませんでした。そうした先輩たちの思いや存在を感じながら、この二作同時上演という過酷なトライに挑めるなと幸せに思いながら、みんなで頑張っていけたらと思っています」と目を輝かせました。

 

また、中島さんは「このカンパニーで『ヘンリー六世』という三部作から、シェイクスピアの歴史劇シリーズを始めて、このチームでずっと動いているという幸せな時間を過ごしました。その年数があるので、まず、みんなとできるというのがこんなに幸せなことはないと思っています」と微笑むと、「それぞれを単体で読むよりも、2本いっぺんに読むと見える世界がまた違ってくるんです。これはマジックだと思います。それを自分の肉体を使って届けることができるというのが楽しみで仕方ありません。みんなと作り上げていきますので、たくさんの方に観ていただけたらと思います」と思いを語りました。

 

2009年の『ヘンリー六世』以来の新国立劇場でのシェイクスピア作品出演となるソニンさんは、「戻ってこれたことが嬉しくて、胸がいっぱいです。そんな気持ちで、お話をいただいて二つ返事でお受けしました」とオファー時を振り返り、「この作品は男女の愛を中心にしている物語であり、女性が大活躍する話であり、そして問題劇と言われている二作品です。読めば読むほど、シェイクスピアの描く女性は難しい。一筋縄ではいかないなと悶々としている日々です。シェイクスピアならではの何重にも重なっている比喩や皮肉を、魅力的にリアリティを持って演じていけるようにお稽古に励んでいきたいと思います」と意気込みました。

 

さらに、歴史劇シリーズとの違いについて、岡本さんは「これまでは敵対している役も多く、戦争のシーンがたくさんありましたし、剣を使って思い切り戦っていたのですが、今回はそういう場面はなくて、心理的に、言葉で、人間的な部分でやりあうというシーンがあります。そういう意味でも、また新たな感情がたくさん出てきています」と思いを述べました。

 

なお、キャストの皆さんは、それぞれの作品で別の役柄を演じますが、この日は、『尺には尺を』でメインキャストを務めるキャストは黒、『終わりよければすべてよし』でメインキャストを務めるキャストは白の衣裳を着用して登壇しました。

 

【公演概要】

■タイトル

シェイクスピア、ダークコメディ『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』

■日程・会場

2023年10月18日(水)〜11月19日(日) 新国立劇場 オペラハウス

■作 ウィリアム・シェイクスピア

■翻訳 小田島雄志

■演出 鵜山仁

■出演

岡本健一 浦井健治 中嶋朋子 ソニン 立川三貴 吉村直 木下浩之 那須佐代子 勝部演之 小長谷勝彦 下総源太朗 清原達之 藤木久美子 川辺邦弘 亀田佳明 永田江里 内藤裕志 須藤瑞己 福士永大

■公式ホームページ

https://www.nntt.jac.go.jp/play/shakespeare-dark-comedy/

(2023,09,01)

photo&text:Maki Shimada

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