2022年10月1日に79歳で惜しまれつつこの世を去ったアントニオ猪木さんの壮大な軌跡を追うドキュメンタリー映画『アントニオ猪木をさがして』が10月6日に公開になりました。映画は、ドキュメンタリー、短編映画 、貴重なアーカイブ映像やスチールの3つの要素で構成され、日本を代表するプロレスラーにして実業家、政治家としてリングの内外で数々の伝説的なエピソードを残してきたアントニオ猪木さんとは、一体どんな人物だったのか?いかなる“存在”だったのか?アントニオ猪木さんの真の姿に迫っていきます。“旅人”としてドキュメンタリーパートに出演する新日本プロレス所属プロレスラー・棚橋弘至選手へ猪木さんへの想いをうかがいました!!

 

ーこの映画へのご出演が決まった時の気持ちを教えてください。
嬉しかったですね。猪木さんに反目してた時期もありましたが、猪木さんがプロレスラーとして、人として生きてきたものを一人でも多くの人に知ってもらいたいと思いがあったので、映画というのはベストな方法でしたね。

 

ーたくさんの方がご出演されていますが、現役のプロレスラーとしてご自身が出演するというところで感じることは?
名誉なことだと思います。猪木さんの引退が1998年で、当時大学4年生でした。その頃憧れていたのは武藤敬司さんでしたが、猪木さんの引退試合は見ておかなければいけないだろうと思って、京都から東京ドームの引退試合を見に行きましたし、あの当時プロレスファンはみんな「道」が言えましたね。「この道を行けば どうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし」。

 

ー新日本プロレスに入門したときに感じていた猪木さんの印象は?
僕は、新日本プロレスの入門テストを3回受けているのですが、入門テストで道場に入った時に、猪木さんの等身大写真パネルが飾ってあって、それを見るとピリッとしましたね。

 

ー映画の中で、道場の猪木さんのパネルを外そうと棚橋選手がおっしゃて外したというエピソードが語られていましたが、その当時はどんな気持ちでしたか?
若かったというのもありますが、猪木さんが新日本プロレスの所属ではなく、ご自身の団体を旗揚げされたので、当時は「だったらいつまでも飾っておく必要はないな」と思って「取りましょう」と話をしました。新しい新日本プロレスを作っていかないといけないと思っていましたので、躊躇することなく言ったと思います。いつまでも猪木さんに頼っていられないという思いがありましたね。

 

ー棚橋選手が外した猪木さんのパネルをもう一度道場へ戻すというシーンがありましたが、そこへ至った気持ちとは?
僕のプロレス人生のタームによって猪木さんへの気持ちに変化があって、今はもう尊敬しかないですね。猪木さんがいなかったら僕はレスラーにはなっていないので。みんなそうだと思います。猪木さんが新日本プロレスを作っていなかったら、新日本プロレスにいる今のメンバー全員がレスラーになっていなかったわけですから。パネルを外した時から今の僕の気持ちになるまで、いろいろな変化があって、パネルを外したのが僕だったら、戻すのも僕だろう、僕以外は戻せないだろうというのもあったので、今回戻させてもらいました。このような機会とタイミングがなければ戻そうと言えなかったと思います。亡くなってからも猪木さんは僕に優しいなと思っています。

 

ー他にもプロレスの団体がある中で、猪木さんが作られた新日本プロレスに入門したいと思った決め手は?
一番大きい団体だったからです。あとはフィーリングですね。当時は新日本と全日本が2大メジャーでしたが、新日本プロレスのセルリアンブルーのリングのマットの方が、垢抜けた感じがしたというそれだけの理由です。

 

ー棚橋選手が憧れられる立場、団体を牽引していく立場になって、意識していることは?
猪木さんのようなスケール感を出すことは難しいとは思いますが、他のプロレスラーと比べても身だしなみは他の選手より意識が高いと思います。いつ何時見られてもプロレスラーってプライベートでもかっこいいんだねと言ってもらえるようにしたいと思っています。猪木さんも常にアントニオ猪木で居続けなければいけないという宿命を背負っていたので、僕もファンの方に声をかけられても、ありがとうございますという感謝を常に意識していますね。移動の服装、ファッション、発言、ファンの皆さんへの対応も僕の印象が、プロレスラーの印象だと思って行動しています。

 

ーアントニオ猪木さんの真の姿に迫るドキュメンタリー映画、どのような作品になっていますか?
どういう作品になるんだろうと想像して、僕は猪木さんのどの部分を伝えたらいいんだろうと考えていましたが、試合映像から伝わる猪木さん、時代背景を描いたドラマパート、現役レスラーの棚橋、オカダ(・カズチカ)、海野(翔太)というフィルターを通した猪木さん。あらゆる面からアントニオ猪木を分析しよう、アントニオ猪木というアウトラインの中身をみんなで埋めていく作業だったと思います。見終わったあとに、アントニオ猪木が完成するというイメージですね。

 

ー猪木さんが日本へ来るまでのエピソードは、今回の映画をみて初めて知る方もいらっしゃるのではないかと思います。映画をご覧になって一番グッときたところは?
僕は、学生時代から含めて、猪木vs(ビッグバン・)ベイダー戦が一番見ている試合です。見るたびにあの時に猪木さんと自分自身が蘇ってくるという感じがしますね。昔の素晴らしい映画って今みても面白いのと同じで、プロレスも賞味期限がなくて、過去の試合をみても、すごい試合はすごいですし、面白い試合は面白いんですよ。昔の試合をフルで見られる特殊なジャンルがプロレスで、そこは他のスポーツとは違うと思っています。これを機に猪木さんの過去の名勝負ももっと多くの人に見てもらいたいなと思います。

 

ー改めて猪木さんがプロレス界に残してくれたと思うことは?
日本でプロレスを始めたのは力道山先生ですが、猪木さんいなかったらどうなっていたかなという世界が想像できないんです。みんな猪木さんの弟子であり、孫弟子であり、ひ孫弟子なのかなと思います。

 

ーもし猪木さんと同じ時代にプロレスラーとして過ごしていたら?
試合をしてみたいですね。プロレスラーって不思議と見えない格というものがあって、並んだ瞬間にこの人は格上だなとかこっちがスター性が上だなとか、ファンの皆さんが独自の視点で見るところがあって、猪木さんと僕が並んだらどう見えるのか、面白いなと思います。

 

ー最後にアントニオ猪木さんの残したもの、新日本プロレスへの思いをお願いします。
コロナ禍もあり、新日本プロレスも動員が減りました。猪木さんの時代も超満員の試合もあれば、苦しい時代もありました。猪木さんに超満員の会場を見せ続けたいですね。「これが、あなたが作った今の新日本プロレスですよ。すごいでしょう!!」って。それを猪木さんには「おおそうか。ふふっ」と天国から会場を見て笑っていて欲しいですね。


【profile】
棚橋弘至/Hiroshi Tanahashi
1976年11月13日生まれ。岐阜県大垣市出身。O型
“100年に一人の逸材”というキャッチコピーで、“プ女子(プロレス女子)ブーム”を牽引する新日本プロレスのエース。メインの試合で勝利した際には “エアギター”を披露し、締めは「会場の皆さん、愛してま〜す!」で大合唱するのがファンの間でのお約束。立命館大学法学部に進学し、1999年卒業後、新日本プロレスに入門。同年10月10日、真壁伸也(現・刀義)戦でデビュー。その後、当時の団体最高峰のベルト、IWGPヘビー級王座を、最多記録となる8度戴冠している。
リング外ではプロレスラーらしい肉体とプロレスラーらしからぬ柔和なマスクを掛け合わせて、ドラマやバラエティー番組などでも幅広く活躍。2018年9月には、新日本プロレス創立45周年を記念して製作された映画「パパはわるものチャンピオン」(配給:ショウゲート)で主演を務めた。
2019年6月には著書「カウント2.9から立ち上がれ 逆境からの「復活力」」(マガジンハウス)、2021年6月には「HIGH LIFE 棚橋弘至自伝1」(イースト・プレス)、2022年12月には「その悩み、大胸筋で受けとめる 棚橋弘至の人生相談」(中央公論新社)を発売。

■X(旧Twitter) @tanahashi1_100
■Instagram @hiroshi_tanahashi
■ブログ 「棚橋弘至のHIGH-FLY」 http://ameblo.jp/highfly-tana/
■WEAR @highflyace

photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Akiko Yamashita


【公演概要】
▪︎タイトル
ドキュメンタリー映画『アントニオ猪木をさがして』
▪︎日程・会場
2023年10月6日(金)〜TOHO シネマズ 日比谷 他 全国ロードショー
▪︎出演
アントニオ猪木
有田哲平 海野翔太 オカダ・カズチカ 神田伯山 棚橋弘至 藤波辰爾 藤原喜明 安田顕
田口隆祐 後藤洋央紀
▪︎製作
「アントニオ猪木をさがして」製作委員会
▪︎制作 パイプライン スタジオブルー

▪︎配給 ギャガ
▪︎公式ホームページ
http://gaga.ne.jp/inoki-movie/
▪︎公式X @inoki_movie

(2023,10,14)

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https://www.instagram.com/noriem_press/

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