『コーラスライン』の作詞家であるエドワード・クレバンの成功と挫折、そして取り巻く登場人物たちの感動の実話を描いた、ブロードウェイミュージカル『クラスアクト』が5月30日を皮切りに全国の劇場で8月まで上演されます。1970年代のニューヨークエンターテインメントの原点を描き出した意欲作である本作で主人公のエドワード・クレバンを演じる筧利夫に作品や役作りへの想い、ファッションについても語っていただきました!!
―『クラスアクト』へのご出演が決まったときはどんなお気持ちでしたか?
今回は、フィクションではなく実在の人物の話ですし、ミュージカルですので、楽しませる部分はショーアップしてなければいけないと思っています。その中で、僕自身がやらなければいけないことは、昔アメリカに『コーラスライン』という作品で有名になり、その作品でしか有名にはなれなかったエド・クレバンというちょっと変わった愛すべき人がいたんだよということを日本の全国の皆さんにきちんとお知らせすることです。ちょっと責任重大だなと思いました。
ー筧さんご自身と演じるエドと共通する部分というのはありますか?
いろいろこだわっているところですね。偏屈でこだわるところはこだわりすぎるぐらいこだわって、商売についてはあんまり考えず、それよりも作品作りにこだわることの方が上と思ってるところですね。僕はこの人の代役を日本でやるつもりなので、全部共通していなければいけないんです。違ってるところはない!!ですね。今回はウィッグを被ったり、表面上変わるので、役の時と普段は分けられるかな。
ー役に入るとのめり込んだり、普段も役の感情に影響を受けることが多いですか?
いつもではないですけど、そういう時もありますね。舞台はセットがあって、照明が入ったり、普段よりも少し派手目な衣裳を着たり、デフォルメしてる部分があるので、すごく幻想的な現場で、リアルではなく非日常のものをお見せするのだけれど、実は本当にその場にいるような、その世界観に自分がいるような錯覚に陥ることが時々ありますね。
ー映像の作品ではあまりないことなのですか?
映像の作品は基本リアルな世界で、シーン毎の部分的な撮影が多く、長回しでずっと演じるところを撮影するということはあまりないので、撮影が終わると気持ちは切り替わります。でも、舞台はもう始まったらずっと繋がって、気持ちが途切れていないので、役の影響を受けることが多いですね。
ー筧さんが感じる舞台の魅力とはどんなところですか?
最初から最後までずっと続けてやれるところですね。始まりから完結までを2時間連続して演じられるところが面白いし、常にお客さまの反応や雰囲気があるので、その様子を見つつ出来ることです。でも一概に面白いとは言えないですよ。やはり舞台は大変だし、難しい。でも面白くもあります。
ーそれでも出演し続ける魅力が舞台にはあるんですね!!
そうですね!!特に今回はミュージカル作品で、僕自身ミュージカルの経験はたくさんある方ではなく、まだまだ発展途上なところがあるので、毎回音符に音を乗せて言葉を喋ることがうまくなりたくてやっているというところもあるんです。まずは台詞を完璧に覚えて、そこから喋っていく、そこからもう1段階それを音符に乗せるというのがあるんです。それが難しいし面白いですね。
ー筧さんの中で役作りのルーティンはありますか?
今回演じるエドは実在の人物なので、インターネットで調べたら情報は出てきますが、結局は台本に書かれてるものしか、頼りはないので、台本を読んで、内容を把握したら、あとはずっとその台詞を覚えて、順番に喋って、自分の中に浸け込んでいくことですね。それしかないと思っています。初見で台本を読んだときは、表面的なところしか分からなくて、覚えて喋ってもやっぱり分からないところだらけで、そこから考えて納得することもありますが、やはり心では分からないんですよ。でも2ヶ月3ヶ月と続けてやっていくと、前には分からなかったことが、なんとなく分かるようになってくる。この熟成期間が必要で、その熟成期間があるのとないのとでは、本番でにじみ出てくるものは違うんじゃないかなと思うんですよね。この作品は、エド・クレバンという人の人生をダイジェストにお見せしていく感じですので、多少エンターテインメントがあったとしても嘘はないと思います。とにかく本番で舞台に出た時に、どのぐらいエド・クレバンでいられるか、そこが今回一番重要なところだと思っているんです。衣装を着たらエド・クレバンでいることが今回のテーマです。
ー作品のビジュアルからもイメージがすごく伝わりますよね。
最終系はこれからですが、今回の初めての試みは、稽古も本番の風貌に近づけてやっていこうと思っています。稽古用のウィッグも買ってあって、予想よりちょっとシルエットが大きかったので僕に似合うようにヘアメイクさんにカットしてもらいました(笑)。
ーオリジナルのマイウィッグですね!!
眼鏡も似た感じのものを買ってかけて、服は茶色のアディダスのジャージだなって思って探したんですがなくて、メルカリで探したら良いのが見つかって、それを着て、稽古中はみんなにも僕というよりもエド・クレバンと思ってもらえるようにと思っています。
ーこの作品の筧さんの準備はいつからスタートされているのでしょうか?
昨年の11月です。その時点で決定稿に近い準備稿をいただいて、そこから読み始めて、セルフを覚え始めました。これくらい寝かしておくと良いんですよ。昔はすごく台詞が多い作品があって、そのときは6ヶ月前から台詞を覚え始めたこともありました。それでやったら、1回も台詞を噛まないんですよ。 自由自在に台詞を話せるので、あれを1回体験すると、大変だけれど6ヶ月前から準備することをやめられないですね。
ー準備期間をしっかりとって本番に臨むというのはどの役に対しても同じですか?
僕自身どうしてもこの役をやりたいというものはあまりなくて、いただいたオファーを受けた以上は、やれる限りのことはやらないとと思っています。しかも自分のものになっていくことは面白いですしね。本当にセリフが自分のものになった時の快感ってないんですよ。舞台の上でどういう風にでも喋れて、つっかかるところが1つもなく、自分の中で覚えたものを話しているのではなく、そのまま自然と出てくる感じになるんです。その快感を個人としては求めていますね。
ー演じるエドが作った『コーラスライン』の魅力はどんなところだと思いますか?
主軸にスポットを当てていないところですね。本当に大昔に舞台でも観たことがありますし、映画でも見たことがあるんだけど、ちょっと思い出があるんです。その当時第三舞台という劇団にいて、「コーラスライン」が上映された後に劇団公演が予定されていて、そこで、「コーラスライン」の振り付けを全員でやりたいから、覚えてこいって演出家に言われて、個々で映画を見に行って、戻って稽古場で覚えたところをみんなで持ち寄って、繋げて1曲をみんなで公演でやった思い出ががあります。今みたいに記録されたものがなかったので、何回も足を運んで本当に大変で苦労しました(笑)。
ー改めて作品を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
『クラスアクト』は、笑ったり、泣けたり、ダンスや歌、いろいろなものが入ったトータルエンターテインメント作品です。あまり難しい内容をお見せするつもりはないので、そのまま初見で前情報なしでご覧いただいても十分に楽しめる内容だと思うのですが、より深く入っていただくために、作品の情報やエド・クレバンや「コーラスライン」という作品、その時代の背景やそこに生きた人たちの生活について下調べをして、理解した上で観に来ていただくと、導入部から分かりやすく、感情移入しやすいと思います。約2時間半、皆さんと同じ空間で、一緒に心の中で歌って、叫んで、笑って、泣いていただけたら幸いです。そしてその後に、おいしいお酒を飲みながら、友人や恋人、ご家族と一緒にその日の夜は『クラスアクト』の感想で過ごしていただけたら幸いです。
▶️筧利夫さんのファッション事情◀︎
ー今日の衣装のお気に入りポイントを教えてください。
ちょっと袖の短いところとTシャツの裾がアシンメトリーにさがっているところが気に入ってます。僕自身は普段は選ばないスタイリングです。スタイリストの方が、普段ビジュアルバンドの衣裳を担当していることもあって、普段僕が着ない雰囲気のものを持っていきてくれて、着けているアクセサリーも良い感じですよね。
ー筧さんの普段のファッションスタイルどんな感じですか?
普段はジャージが多くて、アディダスにこだわっています!!普段はもう上から下までアディダスです!!靴だけはアシックスが多いですね。
ー稽古着もアディダスの茶色のジャージを探されたとお話しされてましたね!!
衣装は、雰囲気を作ってくれるアイテムでそれがないと、埋まらない部分をパワーで押しきらなくてはいけなくなってしまうんですよね。特に今回は見かけが全く違うので、素の僕でやろうとすると、パワーでなんとかしようとするので、その余分な力を抜いて行きたいんですよね。
ー忙しい時のリラックス方法とか気分転換方法を教えてください。
ネットでいろいろなものを買ってしまうことかな?
ー今までで思わず買ってしまったアイテムでご紹介できるものを教えてください。
そうだな。。。なんかあったかな?すごく高い金額のものを買うというよりも普段だったら躊躇してしまうものを買ってしまうんですよ。普段はウイスキーを買う時にジャックダニエルを選ぶところを、バランタイン30年とかを躊躇せずにバンバン買っちゃいましたね。忙しい時は自由な時間がないですからね、時間が経って届く贈り物のようで楽しみじゃないですか(笑顔)。
【profile】
筧利夫/Toshio Kakei
1962年8月10日生まれ。静岡県出身。
大学時代から劇団☆新感線に参加し、1985年に劇団第三舞台に参加。
テレビ、映画、舞台と幅広く多くの番組、作品へ出演し活躍。
近年の主な舞台出演作は、『ミス・サイゴン』 (2004年・2008年・2014年)、A New Musical
『JAM TOWN』(2016年)、ミュージカル『深夜食堂』(2018年)。
公式ホームページ https://www.kakei.jp/
公式X https://x.com/Kakei_English
photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Akiko Yamashita
【公演概要】
■タイトル
ミュージカル『クラスアクト』
■日程・会場
東京公演:2024年5月30日(木)~6 月2日(日) サンシャイン劇場
宮崎公演:2024年6月6日(木) 宮崎市民文化ホール
熊本公演:2024年6月8日(土) 熊本城ホール メインホール
鹿児島公演:2024年6月9日(日) 鹿屋市文化会館
愛知公演:20204年6月13日(木) 愛知芸術劇場
岡山公演:2024年6月16日(日) 倉敷市芸文館 ホール
青森公演:2024年6月20日(木) リンクステーションホール青森
静岡公演:2024年6月22日(土) 沼津市民文化センター 大ホール
香川公演:2024年6月29日(土) ハイスタッフホール(観音寺市民会館)
愛媛公演:2024年6月30日(日) 愛媛県県民文化会館
沖縄公演:2024年7月6日(土)〜7月7日(日) 那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
福井公演:2024年7月13日(土) フェニックス・プラザ エルピス大ホール
北海道公演:2024年7月18日(木) カナモトホール(札幌市民ホール)
兵庫公演:2024年7月26日(金) 神戸国際会館こくさいホール
大阪公演:2024年7月27日(土) 南海浪切ホール
長崎公演:2024年8月3日(土) 長崎ブリックホール
■出演
エド:筧 利夫
ソフィ:紫吹 淳
ルーシー:高橋由美子
マーヴィン:吉田要士
リーマン先生:ブラザートム
フェリシア:松岡美桔
モナ:星野真衣
ボビー:広田勇二
チャーリー:平山トオル
マイケル:吉田 潔
ダンサー:市川由希 ほか
■公式ホームページ
https://aclassact.jp/
(2024,05,30)
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