ウィリアム・シェイクスピアの37作品を横糸とし、江戸末期の人気講談「天保水滸伝」を縦糸として、見事なまでに織り込んだ井上ひさしさんの傑作戯曲が、新たな姿で蘇ります。「佐渡の三世次」役で主演を務めるのは、2020年に同公演で「きじるしの王次」役を演じた浦井健治さん。今回から新たに参加する、お文役の瀬奈じゅんさんに、公演への意気込みや役作りについて、さらにはファッションについてもお話を聞きました!!

 

―本作へのご出演が決まったお気持ちを聞かせてください。
「シェイクスピア作品がとうとうきたかと(笑)。これは『勉強しろ』ということだなと思い、出演させていただくことにしました。本作は、シェイクスピアのさまざまな作品のオマージュを入れ込んで作られた作品なので、取っ掛かりとしては一番いいかなと思いましたし、私自身、日本を舞台にした作品が大好きなので、とても良い機会だと思い、飛び込みました」

 

―確かに、シェイクスピアというと、重い空気感の中、ドロドロした物語が展開することが多いので、万人が好きな世界観ではないですよね。
「それでも“喜劇”だったりするでしょう? 人間の滑稽なところや浅はかなところ、愚かなところがおかしいよねということだと理解しています」

 

―ただ、本作はシェイクスピアがモチーフという形ですので、シェイクスピア戯曲ともまた違った世界観です。脚本をお読みになっていかがでしたか?
「面白いなと思いました。スピード感あふれる展開で、人間の表と裏を瞬時に表現していく、すごく面白い作品だと思います」

 

―今回は、お文を演じます。どのような役柄ですか?
「いわゆるやくざの姉御です。強くて小狡いところがあるのですが、それだけ周りを転がせる色気がある女性だと思います。女を利用できるあざとさを表現できたらいいなと思います。ただ強いだけではない。キップが良いともまた違う、女の狡さや色気を出したいと思っています」

 

―本作に限らずですが、役作りをする上で、特に意識されていることはありますか?
「台本をいただいたときに、あまり作り込まないようにしています。一緒に演じる人がどう表現されるかによって柔軟に対応できるように、余白を持って挑むことが役作りの最初のポイントかなと思っています。私は原作がある作品でも、演出家がおっしゃることが一番だと考えています。演出家の言葉に柔軟に対応でき、それを現場でみんなで作っていく。それが舞台の醍醐味だと思いますし、それが一番の役作りなんじゃないかなと。それから、一番気を付けていることが、相手の役を自分が作るつもりでいるということです。私が私の役を作るのではなく、周りの人に作ってもらう。その代わり、皆さんの役を私が作る。自分一人で役作りをせずに、みんなに助けてもらうという気持ちでいます」

 

―演出家さんの言葉が一番ということは、原作だったり、初演だったりということをあまり意識せずに演じられているということですね。
「そうですね。実際に演じてみないと分からないですし、これまでお文を演じてこられた方たちとも私は違いますし、私にしかできないことがきっとあると思っています。藤田さんが私に何を求めるかにもよると思うので。もちろん、自分からも打ち出していきますが、やっぱり演出家の方がおっしゃることが全てかなと私は思っています」

 

―演出の藤田さんとは本作が初めてご一緒すると聞いています。
「作品を観させていただいたことはあります。私の周りで藤田さんとご一緒したという方がたくさんいるんですよ。皆さんから面白いと聞いていたので、いつかご一緒できたらいいなと思っていました。藤田さんが演出されるというのも、この作品に出演しようと思ったきっかけの一つです」

 

―(取材当時は)ビジュアル撮影でお会いしたのですよね?
「そうですね。すごく物腰の柔らかい方だなと感じました。お稽古が楽しみです」

 

―佐渡の三世次を演じる浦井さんとはミュージカル『エリザベート』以来、久々の共演になりますね。
「健ちゃん(浦井さん)がこのお役を演じるところがまだあまり想像ついていませんが(笑)。これまでいろいろな経験を積んでこられたと思うので、ご一緒させていただいて、また何か良い刺激をいただければなと思います」

 

―ほかの共演者の皆さんはいかがですか?
「ほとんどの方が初めましてです。8月に音楽劇『空中ブランコのりのキキ』という作品に出演したのですが、そのときも皆さん初めましてで新鮮でした」

 

―初めての方ばかりというのもまた楽しみですね!!
「初めましての方ですと、どういうふうに出てくるかが分からないじゃないですか。皆さん、どういうお芝居をされる方なのかすごく楽しみです」

 

―今回、東京公演の後には全国公演も控えています。全国公演で楽しみにしていることはありますか?
「各地域の違いを楽しめるのが、すごく楽しみです」

 

―やはり地域によって違いがありますか?
「全然違うんですよ。大阪はすごくノリがいいけれど、名古屋は本当にお客さんがいるのかなというくらいシーンとしている。けれども、終わった後の熱狂がすごいんです。フィナーレで客席が明るくなるまではシーンとしているけれども、明るくなったらものすごく大きな歓声が聞こえます。地域によって本当に違いますね。他にも、博多に行くと、“待ってました感”がすごいんです」

 

―なるほど!! ありがとうございました。では、改めて公演に向けての意気込みと読者にメッセージをお願いします。
「再演からの参加でドキドキしていますが、私らしくこのお文という役を生きたいと思います。素晴らしい共演者の皆さまと一緒に良い舞台を作りたいと思いますので、ぜひ観にいらしてください」


▶︎瀬奈じゅんさんのファッション事情◀︎
―今日のお衣裳のポイントを教えてください!!
「レーシーなすごく素敵な衣裳を用意していただきました。リボンがかわいらしいですよね。グリーンが差し色になっていて。ピアスもそれに合わせて選んでいます」

 

―指輪も素敵です!!
「かわいいですよね。一目惚れなんです(笑)」

 

―普段は、どんなお洋服を着ることが多いのですか?
「ほとんど黒です。黒が1番落ち着くんですよ。今回は、黒にしてくださいと言ったわけではなく、用意してくださったのが黒だったのですが」

 

―お好きなスタイルはありますか?
「ジャケットスタイルが好きです」

 

―最近買ったお気に入りのファッションアイテムは?
「カバンがお気に入りですね。『Deuxieme Classe』のもので、スゥエード素材のざっくりと持つトートバッグなのですが、色が好きなんです。ベージュっぽい色で、黒で文字が書いてあるのですが、軽くてオシャレで気に入っています。カバンでは、『MUSE de Deuxieme Classe』も『L’Appartement』も好きで、そこで買ったカバンが気に入っています」

 

―最近、お休みの日にしていることやマイブームを教えてください。

「息子と娘と主人と一緒にスーパー銭湯に行っています。昨日も行ってきました。息子がスーパー銭湯にハマってしまって(笑)。娘はまだ分かってないですけど、一緒に連れて行って。女子と男子で分かれて、『後でね』って(笑)。私はムチムチの2歳児に癒されながら湯舟に入って、その後、食堂でご飯を食べて、のんびり過ごすというのが最近のブームです(笑)」

 

―疲れやストレスが溜まったときの癒しは?
「ストレス溜まったときは家でボーッとすることが一番ですね。ただ、家にいると、ボーッとする時間なんかないんですよ。だから、夜更かししてしまいます(苦笑)。次の日つらいのは分かっているんだけれども、夜更かしして、夜一人の時間を楽しむというのが私のストレス解消です。もちろん、子どもが嫌なわけじゃない。ですが、どうしても疲れてしまうときもある。子どもがいる時間を充実するために、一人の時間も大切にしたいなと思います」

 

―すごく分かります。夜更かしして動画を見たりする時間が必要ですよね。
「そうそう! 配信動画を見たり、携帯ゲームをしたり、本当に何も考えずにボーッとするんです」

 

―では、瀬奈さんがカッコよくい続けるためにしていることは?
「自分に誠実に、今を大切に生きること。嘘をつかない正義感は、私はあまりいらないかなと思っていて。つかなくてはいけない嘘もあると思うし、ついた方がいい嘘もあると思うんです。だけど、もちろん正義感もあっていいと思います。最近思うのは、白黒よりもグレーが大切だなと思うんですよ。グレーの中でいかに誠実でいられるか。誠実なグレーでありたい。それが人間としてカッコいいと思う姿かな。そうありたいと思っています」

 

【profile】
瀬奈じゅん/Jun Sena
1974年4月1日生まれ。東京都出身。
1992年3月宝塚歌劇団に入団、2005年5月 月組男役トップスターに就任。2009年12月退団。退団後もミュージカルや舞台を中心に活躍中。第37回菊田一夫演劇賞演劇賞、第3回岩谷時子賞奨励賞を受賞。
近年の主な舞台作品は、『ブロードウェイと銃弾』『検察側の証人』(2021年)、『カーテンズ』『黄昏』『ヘアスプレー』(2022年)、『SUNNY』『ビートルジュース』(2023年)、『モンスター・コールズ』音楽劇『空中ブランコのりのキキ』(2024年)など。

▪️公式ホームページ
http://www.jun-sena.jp/
▪️公式Instagram

https://www.instagram.com/junsena_official/

photo:Hirofumi Miyata/styling:Junko Shimohira/hair&make-up:Mie Matsumoto/interview&text:Maki Shimada

Lace-pullover/sakayori.(お問い合わせ:tel 044-328-9553)
Tops/ykF(エフ)(お問い合わせ:tel 03-3403-6758)
Skirt/CHONO(お問い合わせ:tel 046-876-6403)
Necklace&Ring/QAYTEN、Pierce/ALESSANDRA DONÁ(お問い合わせ:LIZI PRESS tel:03-6427-4471)


【公演概要】
■タイトル
絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』
■日程・会場
東京公演:2024年12月9日(月)~12月29日(日) 日生劇場
大阪公演:2025年1月5日(日)~1月7日(火) 梅田芸術劇場
福岡公演:2025年1月11日(土)~1月13日(月) 博多座
富山公演:2025年1月18日(土) ・1月19日(日) オーバード・ホール 大ホール
愛知公演:2025年1月25日(土) ・1月26日(日) 愛知芸術劇場大ホール
■作 井上ひさし
■音楽 宮川彬良
■演出 藤田俊太郎
■出演
浦井健治 大貫勇輔 唯月ふうか 土井ケイト 阿部裕 玉置孝匡 / 瀬奈じゅん 中村梅雀 章平 猪野広樹 綾凰華 福田えり / 梅沢昌代 木場勝己 ほか
■公式ホームページ
https://www.tohostage.com/tempo/

(2024,12,03)

#NorieM #NorieMmagazine #ノリエム #瀬奈じゅん さん #天保十二年のシェイクスピア

下記のリンクのインスタグラムに瀬奈じゅんさんのインタビュー撮影時のアザーカット&コメント動画を公開いたします!!

お見逃しなく!!

https://www.instagram.com/noriem_press/