女性たちの闘いと連帯の物語が大きな話題となり、2019年に第27回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞したミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』が6月に再演を迎えます。女性の権利を求めて労働争議を率いた実在の女性サラ・バグリーを演じる柚希礼音さんに初演の思い出、再演への思いをたっぷりとお聞きしました。
ーミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』が6月に再演を迎えます。再演が決まった時の気持ちを教えてください。
いつか再演する作品だろうなと思っていたので嬉しかったです。私の周りの女性の友達もこの作品をすごく好きになってくれていて、再演が嬉しいという声をたくさんいただきました。「今日も機械のように働きました」などとこの作品を引用したメッセージをくれたり、歌を引用してくれたり、会うとまずこの作品の振りを挨拶がわりにしてくれたりと働く女性にすごく刺さった作品だと思います。今回もより多くのお客さまにご覧いただきたいです。
ー初演を拝見しましたが、すごくパワーをもらえる作品だと感じました。サラを演じたときに柚希さんご自身が感じた心の共感や苦労したところはどんなところでしたか?
音楽がとても素晴らしく、一方でとても難しくて、本番が始まってからも難しいなと思いながらやっていました。でもあのリズムがあるからこそ伝わるものがあると思うので、今回も一からやり直して頑張ろうと思っています。当初、サラは女性たちの強いリーダーだと思ってこの作品に臨みましたが、思っていたリーダーとは違っていて、でもすごく好きなリーダー像です。この作品はとても強い女性が「こうだよ」と言って終わるわけではなく、お客さまも自分もほんの一ミリでも何か思うことがあったらやってみようとか、自分も変わろうと思えばまだまだ変われる!!というような、背中を押すことができる作品だと思います。夢を見て、お金を稼ごうと思って故郷を出てきたサラが、実際に工場の労働環境を見て、こんな状況でみんな大丈夫なの??と疑問を持つところから、サラ自身も悩んで、みんなに迷惑をかけないように工場から出ていこうと思ったり、やっぱり闘おうと思ったりと葛藤があるリーダーなのも共感できました。
ー柚希さんご自身が困難に直面した経験はたくさんあると思いますが、どんなふうに乗り越えてきましたか?
本当にたくさんの困難にぶち当たっているのですが、そのときに、努力をしたら絶対にいつかは報われるということです。宝塚の下級生時代から何年もかけて努力したことがやっと花開く瞬間が訪れたという経験があります。その時は突然周りの方が上手くなったねと言ってくださったのですが、ここで急にうまくなったわけではなく、たまたま巡ってきた役でそれが活かされたのだと思います。絶対に叶えたいことがあるのなら、コツコツとやり続けることが大切だと思います。
ー柚希さんはストイックで、常に新しい挑戦をご自身に課しているという印象があるのですが。
そう見えるんですよね(笑顔)!!私はそんなに自分に厳しい人間ではないんですよ!!ひとつ終わると次の大きな壁が様々なタイミングで来るんですよ。
ーその壁には怯まずにさぁ次にいってみよう!!という気持ちになりますか?
壁が現れたときはいつも怯みます。今回も『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』の譜面を見て、初演も経験しているのにそう思いましたが、それによって自分自身がより努力をするようになっているのだと思います。
ー柚希さんの出演された作品で、再演を迎える作品も多いと思います。今回の『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』も含めて、ご自身が初演を演じた作品の再演が決定するというのはやはり嬉しいという気持ちが大きいですか?
再演になるということは、初演の際に良かったとお客さまが思ってくださったということですので、それが『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』という作品だったということはとても嬉しいです。再演は、ハードルが高く大変なんです。宝塚時代もそのハードルを感じながら、『ロミオとジュリエット』の再演にも挑みました。「良かったらしいよ」とか「賞をとった作品だよ」という評判を聞いて観に来てくださるお客さまもいらっしゃるので、手探りでやっていた初演のときよりも客観的に稽古をやっていきたいです。改めてこの作品の稽古に入る前に映像を見たり、譜面や台本を読み直してみると、今の自分にすごく勇気をくれる言葉がたくさんあって、見終わった後に、この作品から「私もまだまだ変われるんだ」とちょっと背中を押してもらえた感じがしました。こういった気持ちをお客さまにお届けできたらなと。まだまだ自分には可能性があるんだという気持ちをお客さまおひとり、おひとりに届けられたらと思います。
ー作品を見ているとノートに書き留めておきたい言葉がありますね。劇場では書き留めることができないので、心なかでしっかりと留めておきたい言葉がたくさん出てきます。
心に響く言葉は皆さんそれぞれ違うと思います。初演の音源を聞くと、自分が演じているサラ以外の言葉でも響く言葉がたくさんあります。
ーこの作品では、ソニンさん演じるハリエットとの対立と友情というところも見どころだと思います。ソニンさんの印象を教えてください。
この作品で一緒になるまでは、強い女性の役を演じているのをよく拝見していたので、すごい集中力で、稽古場では、どう取り組んで役を作っているんだろうと思っていましたが、ハリエットでは、熱い思いがありながらもいろいろな組織からの圧力に耐えている女性が最後に爆発したときのかっこよさ。そこに毎回感動していました。今回も楽しみだなと思いますし、この4年間、ソニンちゃんも違う人生を歩んできて、今のソニンちゃんが作るハリエットは初演の時とは違うと思いますので、そこも楽しみです。稽古場では、お姉さんみたいにこれがいいよといろいろと教えてくれます。
ー柚希さんご自身は座長として稽古場で意識していることはありますか?
私は座長のときもいつもと変わらないと思います。宝塚歌劇団でトップになったときは、すごく張り切って、5組の中で一番良い組にしたいという気持ちで、こうしたほうがいいよとみんなにアドバイスをしていたのですが、そういうときはあまり周りが付いてこない感じがしたんです。そこで、まずは自分がやるべきことに集中して今日より明日、1回目より2回目とやっていくうちに、その背中を見てみんなが自然と付いてきてくれるようになりました。いろいろな気配りをしているよりも、まずは自分のやるべきことをしっかりとやり、そして毎日成長するようにしている姿を見て、皆んなが付いてきてくれるようになったので、そこから、とにかく私のやるべきことをしっかりやるという方向に変わりました。初めてご一緒する方にはきちんとお話ししたりしますが、役を通して深まっていくものなので、そこを大切にしています。
ー綺麗な秘訣、綺麗でいる秘訣は?
自分へのご褒美です(笑顔)。毎回驚くほどのご褒美を自分にあげます。人生の中で一番自分にご褒美をあげられるのは自分です。先日、シアターコクーンでダンス作品に出演させていただき、その1週間後にはステージで3曲歌う公演があり、それは自分にとって切り替えが難しくて。なんでこのハードルの高い曲を選曲してしまったんだろうと思いつつ、本番はとても楽しかったんですけどね。その公演が無事に終わった夜の乾杯たるや。いつもよりちょっといいワインを開け、たくさんではなく、少し飲むだけでもご褒美になります。豪華なご褒美でなくても、自分にとってのご褒美だって思うだけでよいのだと思います。できるときには、海外や国内へ旅行に行くこともあります。宝塚時代もどんなに休みが短くても公演が終わったらひと区切りと思い、行っていましたね。忙しい時は千穐楽の夜の便で飛ぶということもあって、そういう時はスーツケースを持って楽屋入りをしていました。
ーそれはもうワクワクしかないですね!!
そうなんですよ(笑顔)。しっかりと集中して、終わったときには乾杯!という感じで旅行に行くとリフレッシュすることができしんどくなった心が自然に触れて蘇ります。そこで改めて自分は舞台がやりたいんだと思うことができ帰ってくるとまた頑張れるんです!!
ー最後に改めて、再演に向けて意気込みをお願いします。
この作品を再演できることが本当に嬉しいです。みんなでたくさん話し合って本番に向かっていきたいと思っています。そして本番では、必死に生きた実在の女性たちが立ち向かう姿を通して、皆さんの背中をちょっと押せるようなパワーをお届けできるように気合を入れて頑張ります。より多くの方にご覧いただきたいと思います。
▶︎柚希礼音さんのファッション事情◀︎
ー本日の衣裳のお気に入りポイントを教えてください。
脚長効果のあるこのパンツです!!
ーウエストマークのベルトが効いたシンプルカラーのクールなスタイリングですね。こういうイメージにしたいとスタイリストさんへお願いすることもありますか?
シンプルなカラーは割と好きで、スタイリングはお任せさせていただくのですが、オーダーする時もあります。いつも素敵におしゃれにスタイル良く見せようとしてくれています
▶︎スタイリスト間山さんに聞いたここがポイント◀︎
柚希さんはスタイリングの大きなイメージをお持ちで、それを少しずつ取り入れたスタイリングにしています。今日のスタイリングはモノトーンで、脚長効果を意識しました。シューズはセルジオロッシというブランドです。甲の部分がストレッチになっているので、とても密着感があって履きやすいシューズです。柚希さんのスタイリングで一番意識しているのは、やはりプロポーション良く見せることですね。
【profile】
柚希礼音/Reon Yuzuki
6月11日生まれ。大阪府出身。
1999年初舞台。2009年宝塚歌劇団星組トップスターとなり、6年に渡りトップを務め、2008年に「第30回松尾芸能賞」新人賞、2010年に「第65回文化庁芸術祭賞」演劇部門新人賞、2012年に「第37回菊田一夫演劇賞」演劇賞を受賞。
2014年には日本武道館での単独コンサートも行うなど、宝塚歌劇100周年を支えるトップスターとして活躍。2015年5月同劇団を退団。
退団後の主な出演作は、ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』『マタ・ハリ』『ボディガード』、第27回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞した『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』などがある。
2023年8月には、ディナーショー『REON MUST GO ON―24 Karats-』(東京・大阪)を開催、2024年3月には、ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』に出演予定。
■公式ホームページ
https://www.amuse.co.jp/artist/yuzuki_reon/
■公式Instagram
https://www.instagram.com/REONYUZUKI_OFFICIAL/
■公式Twitter
https://twitter.com/yuzukireonstaff/
【公演概要】
■タイトル
ミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』
■日程・会場
東京公演:2023年6月5日(月)〜6月13日(火) 東京国際フォーラム ホールC
福岡公演:2023年6月24日(土)・6月25日(日) キャナルシティ劇場
大阪公演:2023年6月29日(木)〜7月2日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
■作詞・作曲 クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニー
■脚本・歌詞・演出 板垣恭一
■出演
柚希礼音 ソニン/実咲凜音 清水くるみ・平野綾/水田航生 寺西拓人
松原凜子 谷口ゆうな 能條愛未/原田優一・戸井勝海/春風ひとみ ほか
■公式ホームページ
https://musical-fg.com/
(2023,05,31)
photo:Hirofumi Miyata/styling: Yuki Mayama(M0)/hair&make-up: Eiko Sato(ilumini.inc.)/interview&text:Akiko Yamashita
#NorieM #NorieMmagazine #NorieM #ノリエム #柚希礼音 さん #FACTORYGIRLS #ファクトリーガールズ