海宝直人さんが主演を務める、音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』が2023年6月21日(水)から、東京・大阪・名古屋で上演されます。モーツァルトの名作オペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』誕生の背景にある、詩人ロレンツォ・ダ・ポンテの人生を描いた本作。海宝さんに、天才詩人のダ・ポンテを演じる思いや公演への意気込みをお聞きしました!!
―5月25日に行われた本作の歌唱披露イベントでは、5曲の楽曲が披露され、公演への期待がさらに高まりました!! まずは、イベントを終えた感想をお聞かせください。
あの時は、稽古の中盤だったので、その状態でマイクを持って歌うというのはやはり緊張しました。終えてほっとしたのを覚えています。
―トークもいい雰囲気でしたね。
笑いが絶えず、何か失敗してもみんなで笑って、ツッコミ合いながら楽しく稽古できるメンバーですので。稽古場もすごくいい雰囲気だと思います。
―では、そんな鋭意稽古中の現在(取材当時)は、ダ・ポンテという人物について、どのようにとらえていますか?
彼は、とにかく何かを成し遂げて身を立てたいという思いが強い人物です。彼の中で出世欲だったり、上を目指す想いが強すぎるが故に、時には詐欺だと言われてしまったり、女好きだと言われてしまう。それほどの強い思いを持っている人だと僕は考えています。ただ、彼がそうした思いを持つようになった理由は、幼少期の家庭環境にあるんだと思います。その時のトラウマを振り払いたいという思いから、エネルギーが湧き出ているんだろうなと。なので、彼を突き動かしているそのエネルギーをしっかりと表現できたらと思います。それから、ダ・ポンテは客観的に見たらひどいことをしていますが、どこかチャーミングで憎めない面も持っています。特に1幕では明るく楽しいシーンが多く、詐欺で訴えられる法廷のシーンもコミカルに描いているので、彼のチャーミングさも出していけたらと思っています。
―サブタイトルには「モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才」とありますが、やはり一般的には天才というとモーツァルトの印象が強いと思います。その中で、海宝さんはダ・ポンテのどんなところを天才だと感じていますか?
物語の序盤に、彼がその場で詩をパパパッと書くと、それに人々が虜になっていくという「言葉の媚薬」というナンバーがあるのですが、そのシーンは彼の能力を象徴した場面になっていると思います。彼のその力が(彼を)宮廷へと導いていくのですが、言葉で人の感情を動かすというのはすごい能力ですよね。音楽にも人を動かす力がありますが、それは言葉よりももっと本能的な部分に訴えるもので、言葉はもっと理性的です。なので、言葉で人の感情を動かせるのは、彼の天才的な才能の一つだと思います。
―そんな才能がありながらも、ダ・ポンテは、これまであまりミュージカルなどの創作物の題材として取り上げられてきませんでした。ダ・ポンテに焦点を当てているからこその本作の面白さはどこにあると思いますか?
そもそも彼の人生を見ているだけで面白いと思います。モーツァルトもそうですが、天才は早くに亡くなるといいますよね? でも、ダ・ポンテはかなりの長生きなんですよ。以前座談会で八十田さんから、「長生きそのものがコメディだ」という名言が飛び出しました。言い得て妙だなと。彼は素晴らしい3作のオペラを生み出し、名前を残した後は、タイミングを逃してばかりの人生を送ります。それでも諦めずに必死に後世に名を残そうとしている。80代までずっとそうやって何かを作るために生きてきたけれども、結局、何も成し遂げられなかったという思いを持っています。彼の回想録の最後の文章は「私が求め続けた栄光は結局は得られなかった」「人生なんてこんなもんだ」なんですよ。彼自身はそう感じていたのでしょうが、タイミングの悪さや人の良さがあり、借金を背負ったり、逃げたりしながら、悲しいけれどおかしい彼の生き様はすごく興味深く、面白い。これまであまり取り上げられてこなかったのが不思議なくらい、魅力的な人物です。
―海宝さんがダ・ポンテをどのように演じるのか、より楽しみになってきました!! ところで、先ほど、稽古場の雰囲気もすごく良いというお話でしたが、青木豪さんの演出はいかがですか?
(演出の青木)豪さんは、みんなの意見を吸い上げながら作っていくという演出をされる方なので、みんなが正直に表現できる環境になっていると思います。そうした中で新作を作れるというのはとてもありがたいことです。もちろん、毎日壁にぶつかっていますが、どうやったらもっと自然な感情を表現できるのかということをみんなが意見をぶつけ合うことができるので、とてもいい稽古場だと思います。
―そうして意見を交わして一緒に作り上げている共演者の方たちの印象も教えてください。まずは、モーツァルト役を演じる平間壮一さんはいかがですか?
壮ちゃん(平間さん)も、作品や物作りに対する思いが強い人です。一人の人物として、道筋を通して、お客さんにしっかりメッセージを伝えることを考えながら、毎日稽古を重ね、さまざまなアプローチでチャレンジしている姿は本当に尊敬できますし、素敵だなと思っています。壮ちゃんの持っているアーティスト性がこのモーツァルトという役にマッチしていると思いますし、ここからさらに魅力的なキャラクターになっていくんだろうなと思います。
―モーツァルトの平間さんもとても魅力的なものになるだろうと思いますが、サリエリを相葉裕樹さんが演じることにも期待が高まります。相葉さんの作るサリエリについてはどう感じていますか?
バッチ(相葉さん)の独特の柔らかさがありながらも熱いものがあるというバランスが、きっと今までにないサリエリ像を作るんだろうなと感じています。シーンによってはコミカルな演技も求められますが、バッチが演じることで、みんなが笑い、いい空気になるので、彼の持つ特有の空気感もとても魅力的だと思います。ただ、年上とはちょっと思えない(笑)。本人は「僕は末っ子」と言っていますが、年上なのでしっかりしてくださいと(笑)。
―フェラレーゼ役の井上小百合さんの印象は?
お芝居に対して真摯に向き合う姿勢がすごく素敵です。フェラレーゼは、とても難しい役だとは思います。冒頭では、自分の出世のために人を利用しようとする、ある意味、悪女のようなキャラクターですが、ダ・ポンテと同じ感覚を持つ人間であることが過程を経て見えてくるので、その多面的なキャラクターを豪さんとも話し合いながら作り上げているのを感じます。
―なるほど。今作では、海宝さんは座長という立場から、そうした皆さんを引っ張る立場でもあると思いますが、 座長として意識していることや、座長として特別にしていることはありますか?
この作品に限らず、あまり意識はしていないです。その作品の中で、主にフューチャーされる道筋をそのキャラクターが担っているというだけだと思うので。ただ、全員がいい形で演じられる作品にしたいという思いは強くあります。みんなが意欲的で、全員が素敵だと思ってもらえる作品になるためには、僕はどういうことをすればいいのかということは考えるようにしています。
―ありがとうございました!! 最後に、開幕に向けての意気込みをお願いします。
いい作品を作るため、稽古では作っては壊しを繰り返し、毎日、みんなで力を合わせてこの作品に挑んでいます。30曲以上の楽曲に彩られた作品ですので、聞きどころも見どころもたくさんあります。1幕は、笑いもたっぷりありテンポよく進んでいく一方で、2幕にはドラマがギュッと濃厚に詰まっているので、全編通して楽しんでいただけると思います。ダ・ポンテという、とても興味深い、濃い人生を送った人物を知っていただける作品になると思いますので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
▶︎海宝直人さんのファッション事情◀︎
―今日のお衣裳のポイントは?
ダ・ポンテを意識して選んだものです。彼は、本当はユダヤ人ですが、イタリア人として生きた男なので、イタリアの伊達男感のある衣裳がいいなと思い、スタイリストさんに用意していただきました。スタイリストさんによると、青と茶のコーディネートは、「アズーロ・エ・マローネ」と呼ばれ、イタリアファッションでは絶対方程式ともいえる合わせ方なのだそうです。今回は、それをそのまま使ったファッションだと聞いています。
―忙しい日々の中のリラックス法は?
お風呂が好きなので、時間がなくても近場のスーパー銭湯に行って、炭酸風呂に30、40分浸かってます。それから、美味しいものを食べて寝るというのが一番リラックスできる時間です。
―これからプライベートで挑戦してみたいことは?
音楽をかけてドライブをすることが気分転換なのですが、これまでは、遠くても名古屋までしか行ったことがなかったので、大阪を越えて行きたいという思いはあります。
―今ハマっているものは?
先日、「ゼルダの伝説」の新作ゲームが発売されたんですよ。前作をプレイして、めちゃくちゃハマったので、本当はすぐにでもやりたいんですが、僕はやり始めてしまったら寝なくなってしまうと思うので、我慢しています。壮ちゃんは今、プレイしているらしくて「めちゃくちゃ面白いよ」って言ってましたが…千穐楽を迎えたら、ハマりたいと思います(笑)。
【profile】
海宝直人/Naoto Kaiho
1988年7月4日生まれ。 千葉県市川市出身。
7歳の時、劇団四季『美女と野獣』チップ役で舞台デビュー。その後『ライオンキング』の初代ヤングシンバ役に抜擢される。その後『レ・ミゼラブル』マリウス役、劇団四季『ノートルダムの鐘』カジモド役、『アラジン』アラジン役などを演じ舞台を中心に活躍を続け、2018年『TRIOPERAS』でウエストエンドデビュー。またシンガーとしてロックバンド「シアノタイプ」では2021年「PORTRAITS」をリリース。ほかソロでも2020年に2ndソロアルバム「Break a leg!」をリリースするなど音楽活動を展開している。近年の出演作に、『ミス・サイゴン』、『ネクスト・トゥ・ノーマル』、『MURDER for Two』、『王家の紋章』、『イリュージョニスト』、『ジャージー・ボーイズ』など。『アリージャンス~忠誠~』のサミー役、TOHO MUSICAL LAB.『Happily Ever After』の男役の演技に対して第46回菊田一夫演劇賞を受賞。今後は9月より『アナスタシア』、12月より『ベートーヴェン』に出演予定の他、現在上映中の映画『リトル・マーメイド』日本語吹替版のエリック役ヴォイスキャストを務めている。
■公式ホームページ
https://kaihonaoto.com/
■公式Twitter
https://twitter.com/naotosea/
photo:Tsubasa Tsutsui/interview&text:Maki Shimada
【公演概要】
■タイトル
音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』
■日程・会場
東京(プレビュー)公演:2023年6月21日(水) ~6月25日(日) シアター1010
愛知公演:2023年6月30日(金)・7月1日(土) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
東京公演:2023年7月9日(日) ~7月16日(日) 東京建物Brillia HALL
大阪公演:2023年7月20日(木) ~7月24日(月) 新歌舞伎座
■作 大島里美
■音楽 笠松泰洋
■演出 青木豪
■出演
海宝直人 平間壮一 相葉裕樹 井上小百合 田村芽実 青野紗穂 八十田勇一 ほか
■公式ホームページ
(2023,06,20)
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