2003年にミュージカル『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役で華々しい舞台デビューを飾った新妻聖子さん。以来、日本ミュージカル界屈指の歌姫として第一線で活躍を続け、2023年にデビュー20周年を迎えます。そんな記念すべき今年、新妻さんは『Seiko Niizuma 20th Anniversary Concert Tour~HARMONY~』を開催。フルオーケストラの演奏による豪華コラボレーションでその歌声を届けます。コンサートについてやミュージカルへの想いなど、たっぷりお話を聞きました!!

 

―まずは、今回のコンサートがどんなものになるのか教えてください!!
コンサート自体はほぼ毎年開催させていただいているので、いつもの雰囲気も残しつつ、今回は少しスペシャルな時間になったら良いなと考えています。これまで10周年の時も15周年の時も、周年記念コンサートはやってこなかったので、周年を銘打ったコンサートは今回が初めての開催になるんです。20年というのはとても大きな数字ですし、今回を逃したら次は30周年までないと思いまして(笑)、今ならできるのではないかと思い、開催させていただきました。

 

―今ならできるというのは?
10周年の頃は、私は働き盛りでしたので、とても忙しくお仕事をさせていただいていたんですよ。なので、周年記念コンサートを開催できるスケジュール的な余裕もなかったんです。15周年の夏は、息子を出産していたので無理でした(笑)。今は育児を優先して仕事をセーブしているので、スケジュール的にも落ち着いています。それで、今ならできると思い、ご相談したところ、贅沢にフルオーケストラでとなり、今回の開催になりました。

 

―今回のコンサートでは、これまでの出演ミュージカルからの名曲を披露すると聞いています。今回の選曲のポイントを教えてください。
お客さまに「来て良かった」と思ってもらえるのが一番嬉しいので、どのナンバーにもエピソードを添えてお伝えしながら、緩急をつけて楽しんでいただけるようにと考えています。この曲は外せないというものは確実におさえつつ、「予備知識がゼロでも楽しめる構成」を意識していますし、なにより今回はフルオーケストラの演奏なので、それだけでもきっと喜んで頂けるはず!フルオケだと聞き慣れたナンバーも違って聞こえるんじゃないかな。そこにいつもの喋りすぎるMCが乗っかって(笑)、総合的に「なんかゴージャスで賑やかで楽しかったね!」となったらいいのかなと思っています。

 

―現在、セットリストのうち4曲が発表されていますが、それぞれの曲への想い入れをお聞かせいただけますか?
「On My Own」は私の舞台人生におけるデビュー曲です。2003年に上演された『レ・ミゼラブル』が私の初舞台ですので、そこは外せないなと。20年間の味わいを最も噛みしめていただける選曲でもあるのかなと思います。もしかしたら、長く応援してくださっている方の中には「初舞台を見ていた」という方もいらっしゃるかもしれませんので、そうした方にとっては20年の時を経てまたこの曲をフルオーケストラで聴けるという楽しみもあると思いますので、これはセットリストに絶対に入れようと決めていた1曲でした。

『ラ・マンチャの男』は、新妻聖子コンサートの定番曲です。日本では、松本幸四郎さんが歌われている姿が印象深いと思いますが、海外では女性がカバーすることも多いそうなんです。それで、私も歌ってみたいなと思って歌い始めたら、皆さんがすごく喜んでくださって、定番の曲になっているんですよ。この曲のイントロが鳴ったら、どこかから新妻が現れる(笑)。まるでアントニオ猪木さんの「INOKI BOM-BA-YE」のような立ち位置の楽曲です(笑)。そうした楽曲を久しぶりにフルオーケストラで歌えるのも楽しみですし、お客さまにもきっと「待ってました!!」と思っていただける曲なのかなと思います。
ミュージカル『ボディーガード』の「I Will Always Love You」は、私が最近出演した作品からのナンバーであり、世界的な大ヒット曲ですよね。私のコンサートでは、初めていらした方にも垣根なく楽しんでいただきたいという思いが強くあるので、誰もが知っているような名曲を進んで選曲するようにしています。この楽曲も実は『ボディーガード』に出演する前からコンサートでよく歌っていたんですよ。そんな中、ミュージカル化にあたり幸運にもレイチェル役に選んでいただいて、お芝居を通してこの歌と出会い直せたので、今回はミュージカルの劇中で歌われる日本語版でお届けいたします。アップデートされた「I Will Always Love You」をフルオーケストラでお楽しみいただきたいと思っています。
「愛を止めないで~Always Loving You~」という曲は、私のオリジナル曲で、2007年にNHKで放送された時代劇『陽炎の辻〜居眠り磐音 江戸双紙〜』の主題歌でした。私はこれまでシングルを何枚かリリースしているのですが、その中で1番多くの方に知って頂いている曲なのかなと思います。私の20年の歩みの中では、CDリリースもコンスタントに行ってきたので、オリジナル曲も入れたいと思い、オーケストラ映えしそうなこの楽曲を選びました。

 

―では、改めてデビューからの20年を振り返っていただき、今、どんなことを感じていますか?
最初の10年は、馬車馬のように働きました。最多で年間7本の舞台に出演したこともあったんですよ。本番中に次の出演作の稽古に行くようなスケジュールで…。コンサートもたくさんの場所でやらせていただき、色々なチャレンジもさせていただきました。渦中にいる時は、それは大変でしたし、苦しいなと思った瞬間もありましたが、今、こうして振り返ってみるとなんて恵まれた20年間だったんだろうと思います。当時は、生きるか死ぬかの大問題だと思っていたことも、今、振り返れば大したことではなかったと思えます。もちろん失敗もたくさんしたし、いいことばかりではなかったし、反省すべき点もたくさんあるけれど、これだけは絶対に譲れないということを守りながら活動を続けられたこともとても運がよかった。それも、そばで支えてくださる事務所の皆さんがいたからだと思いますし、お仕事をご一緒している皆さんとの素敵なご縁があったからだと思います。全部に手を抜かず、一生懸命やってきて良かったと思えますし、その時、その時で納得がいくまで自分を追い込むことができた私は幸せだったなと思います。

 

―今のお話の中であった、「絶対に譲れないもの」というのは、どんなものなんですか?
自分の思う到達点を目指して、美学に基づいて向き合うということですかね。その役を通して、私はこういう自分でありたいという目標が常にあって、それに向かって一心不乱に取り組んでいたように思います。本来だったら20代、30代が経験するであろう遊びも一切しないまま、この年齢になってしまったので、そのうちどこかで弾けてしまったらどうしましょう(笑)。

 

―それはそれでいいのでは?
そんな楽しみ方は、若いうちだけの特権だと思いますよ(笑)。私は、その頃は、お酒も好きではなかったですし、我慢をして頑張っていたわけではないので、全く苦ではなかったんですね。やりたいことがあったから、遊びに行かなかっただけなので。喉のコンディションキープが使命だと思っていたんです。今は、昔の自分に「肩の力を抜きなさい」って言ってあげたい。風邪をひいても2週間すれば治るから大丈夫って(笑)。

 

―というと、今は、肩の力を抜いてお仕事に取り組めているということですよね? そうできるようになったのは、何かきっかけがあったんですか?
出産後に頑張りすぎて体調を崩してしまったんです。自分の健康を過信していたんですね。子どもを産んだ後は、声も全く変わらなくて、翌月からコンサートができるんじゃないかってくらい元気でしたし、産休中の遅れを取り戻したいという焦りもあり、多少寝不足でもきっと大丈夫だろう!と甘く考えていました。それで、出産後すぐにコンサートツアーを組んだら、やはり体調を崩してしまって。今、考えると、生後7ヶ月の子どもの夜間授乳をしながら、エンドレスに繰り返す子供の風邪菌をもらいながら、寝ないでコンサートツアーをやろうだなんて、とち狂ってるとしか思えませんよね(苦笑)。そこで学びました。もう生活スタイルが完全に変わってしまったわけで、以前のように自分中心のストイックな体調管理をすることはできないのだから、それを受け入れ、欲張るのをやめようと。できないことはあるけれど、それに比例して、家族は大きな幸せを私にくれるので、その状況に不満は何もない。今は息子のお母さんという役を大事にしたいから、両方をきちんとできる状況でしか仕事をしないと決めたら、心も豊かになりました。業務量も当然、減るので、そうすると、そこに標準を合わせてコンディションも整えられるし、子どもにも「今日だけはお仕事だから我慢してね」と話ができる。いつもいないと申し訳ないけれど、この日だけという仕事の仕方なら心も楽なんです。だから、今は頑張り過ぎてはいけない時期なんだなと思っています。

 

―今後の夢や目標は?
健康でいたいです。先日、スティングさんのコンサートに行ったら、71歳にして筋肉ムキムキで、現役バリバリの声で歌っていらっしゃったんです。何歳になってもかっこいい年の重ね方をして、その年なりの味わいを保ったまま、変わらない歌声で持ち歌を披露できるというのが理想だなと思ったので、私も心身ともに鍛えて、重力に多少はあらがって、でも無理はせず、健やかに生き、いい歌を歌い続けたいです。

 

―新妻さんにとって「歌うこと」とは?
1番好きなことで、体にいいこと。私は、歌っていないと体を壊すんですよ。代謝が落ちるんだと思います。歌うことが私にとって、1番の美容法なんです。こうして普段生活している時よりも舞台上の方が自然に呼吸ができているのではないかと思うほど、私が摂取しなければいけない空気が、舞台やコンサートなどの“歌う場所”にはあるんだと思います。


▶︎新妻聖子さんのファッション事情◀︎
―今日のお衣裳のポイントは?
春先から夏にかけては明るい色味のお洋服を着たくなるので、今日はこの衣裳を選びました。ゆったりとしたデザインでも、体のラインが女性らしくきれいに見えるようなお洋服を選ぶようにしているので、そこもポイントです。

 

―プライベートでのファッションのこだわりは?
ブランドにこだわりがないので、プチプラも大好きです。流行っているものよりも自分の体に合うかどうかだと思うので、試着は必ずして買います。お仕事でスタイリストさんにお洋服を選んでもらい、着させていただくと今の流行りがうまく取り入れられていて、旬も感じることができるので、そのままお買い上げさせていただくこともあります。ずるい方法ですが、そうするとおしゃれな人に見えるじゃないですか(笑)。他力本願なスタイリングで生きてます(笑)。

 

―普段はどんなファッションがお好きなんですか?
子どもを自転車で送迎しているので、パンツにTシャツのようなカジュアルなファッションが多いです。送迎があるから仕方ないと思っているのですが、同じくらいの子どもを育てているママ友でも、とてもおしゃれな人はいるので…私にはやっぱりおしゃれの才能がないのかなとは思います(笑)。でも、私は大好きな歌を神様からいただいたので欲張っちゃダメですよね。いいの、ダサくても(笑)。

 

―最近のお気に入りのファッションアイテムは?
「NOLLEY’S」でピンクの小さなバッグを買いました! このバッグを持ちたいがために財布も小さいのに買い替えたし、スマホケースも嵩張らないサイズに変える予定です(笑)。

 

―マイブームは?
幡ヶ谷にある『Equal(イコール)』というパティスリーに、「いつか行きたいなぁ」と思いながらお店のインスタを眺めることです(笑)。以前差し入れでいただいたチーズケーキが驚くほど美味しくて、多分世界で1番美味しいと思うんですけど、もう一度食べたいのになかなか幡ヶ谷にまで買いに行けず…。このお店はドーナツのフレンチクルーラーも有名なんですが、先日、六本木のポップアップストアで期間限定で販売されていて、それは毎日買いに行っていました(笑)。

 

【profile】
新妻聖子/Seiko Niizuma
上智大学法学部在学中の 2002 年、TBS『王様のブランチ』でタレント活動開始。 2003 年、5000 倍のオーディションを勝ち抜き、初舞台でミュージカル 『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役を演じる。続くミュージカル『ミス・サイ ゴン』ではヒロインのキム役を演じ、豊かな声量と表現力で来日した海外スタッフからも絶賛された。第 31 回菊田一夫演劇賞、第 61 回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、第 7 回岩谷時子賞奨励賞を受賞。数々の舞台でヒロインを務めミュージカル界屈指の歌姫として第一線で活躍。近年ドラマやバラエティ、歌番組等にも多数出演。
■公式ホームページ
https://www.seikoniizuma.com/
■公式instagram
https://www.instagram.com/seikoniizuma/
■公式Twitter

@seikoniizuma

photo:Hirofumi Miyata/styling: Mari Kodo/hair&make-up: Yumi Sakai/interview&text:Maki Shimada

【costume】

Blouse&Skirt:マーク・ケイン/お問い合わせ:三喜商事 tel 03-3470-8233
Accessories:アビステ/お問い合わせ:tel 03-3401-7124


【公演概要】
■タイトル
Seiko Niizuma 20th Anniversary Concert Tour~HARMONY~
■日程・会場
東京公演:2023年7月20日(木) サントリーホール
■演奏
東京公演:東京フィルハーモニー交響楽団

(2023,07,05)

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