紅ゆずるさんが光源氏役を務める、J-CULTURE FEST presents 井筒装束シリーズ 詩楽劇『沙羅の光』~源氏物語より~が、2024年1月に上演されます。本作は、源氏物語の中で詠まれた和歌を、舞や歌、語りで聴かせ、光源氏と心を通わせた女たちの姿を描く作品です。出演者たちは豪華絢爛な平安装束に身をまとい、舞台を盛り上げます。紅さんに光源氏役への想いやNorieM恒例のファッションについてなどをお伺いしました!!
―この企画のどんなところに惹かれてご出演を決めたのですか?
光源氏という役どころです。宝塚歌劇団在団中にも「光源氏をやらないか」というお話が一度あったのですが、その時は男役としてもっと違うことがやりたいと思っていました。ですが、退団して女性の役も演じてみると、男役、女役関係なく光源氏という魔性の人物を演じてみたいと思うようになって。男役だからというよりは、光源氏として源氏物語の世界に触れたかったんです。
―光源氏に対して、魔性の人物という印象を抱いたのは、今回、演じるにあたって作品を通して感じているということですか? それとも、以前からそうした印象を持っていらっしゃったのでしょうか?
以前からそう感じていました。最初に浮かぶ光源氏のイメージは「人を洗脳するのがうまそう」。女性を完全に自分のものにするという印象があります。演じてみてそう感じるのかは分かりませんが、「別にあなたのことは好きじゃありません」という人とも関係を持てる人だと今は思っています。でも、そうして関係を持った女性は多分、光源氏のことしか考えられなくなってしまう。ある意味ではサイコパスのようなイメージなんです。じゃあ、なんで光源氏はそうなったのかというと、母親に1番愛してほしかった時にそれをもらえなかった。要は愛情不足だったから、そうした人格が形成されたのかなと思います。私は、『エリザベート』で描かれているルドルフにちょっと似ているなと思うんですよ。彼もエリザベートの愛情に飢えていますよね。やっぱり母親の愛情って大切なんだなと思います。
―なるほど、ルドルフですか!!
光源氏はルドルフよりさらに複雑ですが。お母さんに愛してもらいたいという思いがある光源氏は、自分の母親と似ているお父さんが愛する人に惹かれてしまいますからね。かと思うと、母親に似ている紫の上に心が揺れ動いたり…ややこしい人物ですよね。一概にこういう人と言えないからこそ、作りがいがある人物なのかもしれません。それに、光源氏は知られているようで、深く掘り下げて知っている人というのはそう多くないと思います。『うたかたの恋』で(紅さんが)ルドルフを演じた時もそうですが、私はそうやって深く役柄を掘り下げていくのがすごく好きなんです。楽しいんですよ。(『うたかたの恋』の)ルドルフも、髑髏が友達だと思っているトリッキーな人物で、最後には自分の愛する人を殺してしまいますが、それにも絶対に理由がある。だから、光源氏もなんとなく事件を起こしているように見えるけれども、そこには多分、光源氏なりの正義がある。だからこそ成り立つ物語だと思うので、そこを自分なりに考えて、パズルのピースをはめるように作り上げていきたいと思います。
―現時点ですでに光源氏について深くまで掘り下げて考えていらっしゃいますが、源氏物語も読み込んで解釈をされているのですか?
今はまだ、そこまで掘り下げてはいないです。私の今、考えている光源氏像が、こういうものだというだけなので、実際に演じてみたら変わっていくかもしれませんし、台本で変わってくることもあると思います。
―では、現時点では、どんなところが演じる上でのポイントだと考えていらっしゃいますか?
光源氏は元々は皇族でしたが、貴族に格下げされて、そこで平穏に暮らせると思いきや、母親が3年後に死んでしまうという、不運を呼んでいる人です。皇族のままいる方が幸せだったのか、貴族でいる方が幸せだったのかは分かりませんが、一般的には格下げと言われることなので、そこが鍵となるのかもしれないなとは思います。他にもポイントはたくさんある人物だと思いますので、今は、実際にどこにポイントを持ってきて演じるのか考えるのかを楽しんでいます。私は、そうやって物語を弄るのが大好きなんですよ(笑)。だから一般的には、『うたかたの恋』も、白の軍服が似合う王子様をイメージされると思います。あんなにも大変な環境で育っているのに、お花を見てきれいと思える心の余裕なんて絶対にないと思いますが、そんな美しい世界観で描かれている。だからこそ、私は、ルドルフは本当はこんなに卑怯な人の正義というのを演じてみたかったんです。そうして演じた時に、ルドルフの正義がやはりあったことを知って、自分としてはルドルフという人を好きになった。光源氏も容姿がいいから許されているところはあるけれども、そうじゃなかったらなんだこの人って思われる人だと思います。見目麗しいから13人も渡り歩けたんだろうなと。
―面白い解釈ですね!! では、光源氏としては、どんなところが見どころになりそうでしょうか?
今は、女性に対して、すがりつくような愛情を表現したいと思っています。彼の愛情は、「俺が全部包んであげるよ。君のことを幸せにしてあげるよ」という包容力がある愛情じゃないと思います。むしろ逆に、自分の心を埋めてほしいと要求しているような、相手からの愛情を欲しているのではないかなと。それが切なく見えて、彼の色気にもつながっているのかなと感じています。
―確かに、女性が守ってあげたくなるような人物ですよね。
そうそう。でも女性の方が強いものだと思うので、男性としては勝ち組だと思います。女性が「私はこの人じゃないと絶対ダメだわ」と思うよりも、「私じゃないとこの人ダメなんだ」と光源氏を私が支えてあげていると女性に思わせるから、光源氏は一夫多妻で色々なところにいけるんですよ。でも、それは、完全にマザコンということですよね(笑)。スーパー・マザコン・ラブストーリー(笑)。純愛ではない。だって、(光源氏は藤壺のことを)「お母さんに似ているから好き」なんですから。でも、そうしたひねくれたところをあえて美化して繋げて、それが素敵に見えたら光源氏という役は成功なんだと思います。
―お話をお伺いしていると、紅さんは、物語に没頭したり、その先を想像するというのがお好きなんですね。
私、小さい頃に、絵本を書くのが好きだったんですよ。その頃は、宇宙にものすごく興味を持っていて、近くの図書館で宇宙の本ばっかり見ていました。それで、そうした本に載っていた土星の輪っかって一体何なんだろうって考えるようになって、そこから輪っかの物語を描き始めたんです。月の長老や織姫や彦星と、彼らを取り巻く大勢の人たちの物語をずっと描いていました(笑)。だから、そういうことが好きなんだと思います。
―光源氏以外でも、掘り下げたいと考えている人物はいますか?
以前、1度演じたことはありますが『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のフランク・アバグネイルJr.は、もっと違う演じ方もできたのかなと考えることはあります。大好きな作品なのですが、当時、かなりタイトなスケジュールでの上演だったので、クリスマスのシーンは、もっと何かできたんじゃないかなと思うと、もう一回やりたいですね。あれも男役ですが。あとは『霧深きエルベのほとり』のカール・シュナイダー。彼は寅さんをイメージして演じたんですよ。不器用で、好きなのに好きって言えない。身分違いの恋も好きでした。
―この作品は、井筒装束シリーズによる本物の装束を纏う舞台公演ということで、お衣裳も見どころの一つだと思います。実際の衣裳を着用した、ビジュアル撮影での印象に残っているエピソードを教えてください。
撮影中に「月を見る感じで」という指示をいただいたのですが、月を見るのってこんなにも難しかったっけ?と思いながら撮影しました(笑)。振り返って、肩越しに見ると色気が出るというのですが、難しいですね。日本舞踊のイメージなのだと思いますが。着物の見せ方や所作が私は全然できてないので、公演までにそれもなんとかしなくては!と思っています。
―2024年はこの作品からお仕事がスタートすると思いますが、2023年は紅さんにとってどんな1年でしたか?
2019年に宝塚退団した後すぐにコロナ禍になってしまって、舞台が中止になり続けていました。舞台は中止になるというイメージがついてしまったくらい、毎日、最後までできるのかなと思いながら続けてきたのですが、やっと今年になって千穐楽をきちんと迎えることが現実味を帯びてきたなと感じます。さまざまなお仕事も回り始めたので、来年も、舞台はもちろん、バラエティーなどいただけるお仕事は積極的に挑戦していきたいと思います。私は、人を笑わせることができるお仕事に魅力を感じるので、バラエティーもぜひ挑戦したいです。
▶︎紅ゆずるさんのファッション事情◀︎
―今日のお衣裳のポイントを教えてください!!
光源氏をイメージさせていただいております。夜っぽくもあり、でも夜すぎることもなく、ちょっと神秘的で…そんなイメージです。
―ブーツもすごく素敵ですね!!
かわいいですよね。これ、びっくりするくらいシースルーなんです(笑)。今、シースルーを取り入れるのが流行っているということで用意していただきました。
―普段はどのようなファッションが多いのですか?
パンツが多いですね。それからニットワンピ、タイトスカートもよく着ます。あとはジャージ(笑)。絶対にこうだというスタイルがあるわけではなく、色々なものを着ていると思います。
―お洋服を購入するときは、どんなところにこだわっていますか?
手と足の長さが足りること。私、めちゃくちゃ長いので、日本製のものだと合わないことが多いんですよ。なので、海外製のものが多いです。H&Mはサイズも豊富ですし、本当にありがとう!!という感じです(笑)。これだと思うものが見つかったら、色違いで購入しています。あとは、お仕事で着させていただいたお洋服を買取させていただくこともありますね。
―最近、お気に入りのファッションアイテムは?
Hアッシュのロングネックレスがお気に入りです。Hアッシュのアクセサリーはポップアップショップをやっていたら必ず見に行っているくらい大好きです。今も早く新作が出ないかなと待っております。
―今作のビジュアルでも麗しいお姿を披露しておりますが、お仕事以外で和服を着る機会はありますか?
着たいとは思っているんですが、なかなか着る機会がないんですよね。かなり前ですが、プライベートで京都の川床に行くのに着ました。友達と遊ぶ時に、ドレスコードをつけるのが好きなんですよ。そのときのドレスコードは和服。みんなで浴衣を着て行きました。
―ドレスコード! 素敵な会ですね。
そう、私がいつも決めてます(笑)。私、ドレスコード大好きなんです。パーティーをするのも好きで、例えばハロウィーンなら「仮装をしてきてください」とか「ゴーストできてください」とか、普段のパーティーでも「今日は赤と黒です」とか。
―川床もそうですが、季節にあった楽しみ方をされているんですね。
好きなんですよ。私の家には1年中、クリスマスツリーが出ているのですが、シーズンごとに飾り付けを変えて楽しんだりもしてます。春は桜、夏はブルーで飾って“サマー・ツリー”にして、秋はハロウィーン。その後は、クリスマス・ツリーにする。季節が感じられるのっていいですよね。インテリアにもいいので。LEDが3つ巻きつけてあるツリーがあるので間接照明もいらないんですよ!!
―素敵です!! では、そんな紅さんのお忙しい日々の中でのリラックス法を教えてください。
ウォーキングとサウナが大好きです。サウナは、最近ブームになっていますが、にわかじゃないです、私。22年前から通っていますから(笑)。今はおしゃれな場所もたくさんできましたが、おばあちゃんばっかりという頃からサウナにいました(笑)。だから私、サウナには一切おしゃれは求めてないんです。ドライサウナ一択。それに冷たい水風呂があればもう十分です。温度差が大切なので。昔ながらのサウナを求めております。
―そうすると、お休みの日は、サウナ?
公演中も毎日、行ってます(笑)。例えば、1時間くらい歩いてサウナに行って、サウナに入って、タクシーで帰ってくるというような時間を過ごしています。
―美の秘訣もそんなところにあるのですね。
美と言えるのかどうなのかは分かりませんが。でも、体を動かすのも好きですし、アンチエイジングのためにアイシングも好きです。
【profile】
紅ゆずる/Yuzuru Kurenai
8月17日生まれ。大阪府出身。
2000年宝塚音楽学校入学。2002年宝塚歌劇団に88期生として入団・初舞台。星組に配属。2016年星組トッ プスターに就任。『GOD OF STARS-食聖-』『Éclair Brillant(エクレールブリアン)』(2019年)東京宝塚劇場 千穐楽をもって退団。退団後は舞台『熱海五郎一座』、ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』(2021年)、本年は舞台『NOISES OFF』への出演、写真集「悪い女 A BAD WOMAN」発売など幅広く活動している。
■公式ホームページ
https://www.shochiku-enta.co.jp/actress/kurenai
■公式Instagram
https://www.instagram.com/kurenaiyuzuru_official/
photo:Hirofumi Miyata/styling:Hitomi Suzuki/hair&make-up:miura(JOUER)/interview&text:Maki Shimada
Blouse&Skirt/AKIKO OGAWA(AKIKO OGAWA 〈03-6450-5417〉)
Earring:5,250円,RING:13,200円/ABISTE(ABISTE〈03-3401-7124〉)
【STORY】
権勢を極めた光源氏(紅ゆずる)は六條院を造営し、紫の上(井上小百合)を妻として迎えようとしている。幼き 日に若紫として光源氏に見染められてから、星霜を重ね、紫の上は遂に光源氏と結ばれる。そう思ったのも 束の間、朱雀帝の娘でまだ幼い女三宮(羽鳥以知子)が光源氏の正妻として降嫁することを知らされ、紫の上 は悲しみに暮れる。そんな紫の上の姿を見て息子の夕霧(日野真一郎)は、父に対する葛藤を吐露する。しかし、歳は巡り、新年の節会、光源氏は女三宮を迎えて宴をひらく……。お互いに愛し合いながら運命 にからみとられ暗闇に引きずり込まれそうになる二人の心に平安は訪れるのだろうか……。 気鋭の歌舞伎作家、戸部和久が源氏物語を新たに解釈する書き下ろしの脚本で、終幕まで目を離すことができない。
【公演概要】
■タイトル
J-CULTURE FEST presents 井筒装束シリーズ 詩楽劇『沙羅の光』〜源氏物語より〜
■日程・会場
2024年1月3日(水)〜1月7日(日) 東京国際フォーラム ホールD7
■演出・振付 尾上菊之丞
■脚本 戸部和久
■出演
紅ゆずる 井上小百合 日野真一郎/
花柳喜衛文華 藤間京之助 羽鳥以知子/
尾上菊之丞
■企画・制作 井筒
■公式ホームページ
https://www.iz2tokyo-genji.com/
(2023,12,19)
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