『第45回 松尾芸能賞』贈呈式が2024年3月29日(金)に行われ、同賞の受賞者が式典に参加。それぞれ受賞の喜びを語りました。
「松尾芸能賞」は、昭和54年3月に設立された公益財団法人松尾芸能振興財団が、日本の文化・芸能の保存・向上に寄与した芸能出演者や演出・音楽・劇場芸能に高い技術を持つ方々を表彰するもの。
第45回となる今年度は、大賞を中村時蔵さん、優秀賞を佐藤B作、米川文清さん、古田新太さん、豊竹呂勢太夫さんが受賞。さらに、新人賞に中村児太郎さん、特別賞に由紀さおりさん、功労賞に林与一さんが選ばれました。
30年前にも、第15回の松尾芸能賞で優秀賞を受賞した時蔵さんは、当時を「その時の大賞は、中村富十郎のお兄さんでした」と振り返ります。そして、「この大賞は、歌舞伎界を代表する方々が受賞するものだと思っておりましたので、私が受賞していいのかと自問しましたが、受賞理由が昨年勤めました『妹背山婦女庭訓』の太宰後室定高と『鎌倉三代記』の三浦之助と聞きました。特に定高は女方の中でも大役中の大役でございます。私も若い時からいつかやってみたいと準備していたお役で賞をちょうだいできることを本当に嬉しく思い、大賞をちょうだいいたすことといたしました。本当にありがとうございます」と受賞を喜びました。
6月の歌舞伎座「六月大歌舞伎」で初代中村萬壽を襲名し、「時蔵」は中村梅枝さんが継ぐ予定となっている時蔵さん。改めて、時蔵さんは、「息子に譲ろうと思ったのは3年くらい前。昨年話がまとまって、襲名披露となりました。(五代目中村時蔵)最後の年にこのような素晴らしい賞をちょうだいして、集大成の年になったなと思っております。この後は、新しい名前を自分で1から築いていかないといけないという気持ちでいっぱいです」と今の心境を明かしました。
そのほかの受賞者のコメントは以下。
優秀賞 佐藤B作さん
佐藤B作という芸名をつけた時はふざけすぎかなと思ったんですが、このように社会に浸透する名前になり、自分でも驚いております。劇団を何度も作ってうまくいかずに、3度目に花王おさむという男が「もう一回やらないか」と、高田馬場のスーパーマーケットでアルバイトしている時に来まして、「じゃあ、もう一回やってみるか」と「東京ヴォードヴィルショー」を始めました。その時から喜劇に魅せられて、それに縛られて、苦労してやってきました。それも全て喜劇に取り組んだせいだと思います(笑)。今日は仲間も来ていますので、美味しいお酒をいただけることを楽しみにしております。
優秀賞 米川文清さん
この度は格式と伝統ある優秀賞を受賞できましたことを、夢心地という言葉を聞きますが、夢心地って本当にあるんだなと1ヶ月以上そのような気持ちでおりました。受賞にあたりまして、理事の先生方、選考委員の先生方、そして私の芸を今まで支えていただいた皆さまに心より御礼申し上げます。古田さんが頭を怪我されたとおっしゃっていましたが、実は私も足を剥離骨折をいたしまして。今日は這ってでもまいりますという気持ちでまいりまして、晴れがましい席で受賞させていただけましたことを心よりありがたく感謝いたします。
優秀賞 古田新太さん
まず、このような席で帽子をかぶっていることを申し訳なく思っております。実は、10日前、家で酔っ払ってすっ転びまして、コンロに頭をぶつけて50針、縫っています。その頭でここに立つのはどうかなと思ったのですが、せっかく呼ばれたのできました。僕は、劇団☆新感線という、今でこそインディーズとか小劇場と言われていますが、もともとはアングラの劇団の人間です。ずっとこっ恥ずかしい芝居をやってきていまして、もうすぐ60になろうとしていますが、これからもまだまだこっ恥ずかしい芝居をやっていこうと思っております。これで褒められたんだから、もうちょっとやっていていいんだなと思っています。よければまた褒めてください。
優秀賞 豊竹呂勢太夫さん
このような立派な賞をちょうだいいたしまして、夢のような方たちとご一緒させていただいて、自分でもこの場にいるのが不思議なくらいで驚いております。私は、大勢のご師匠さん方にご指導をいただきまして、普通の人よりたくさん師匠を持ちましたので、色々な方に教えをいただきました。この「松尾芸能賞」も先代の師匠も受賞していまして、多分、「お前ももらうんか」とあの世で呆れていると思います。ご指導をいただいたお師匠さん方に追いつけるようにこれからも精進してまいります。
新人賞 中村児太郎さん
今回の新人賞を受賞することになり、最初に父、福助に報告しました。この賞を、私と父と親子二代に渡って受賞させていただいております。本当に身の引き締まる思いでございますし、夢のようでございます。また、受賞の理由の一つの演目として、『神霊谷口渡』のお舟というお役でございますが、これは今回、大賞を受賞されます、時蔵のおじさまに懇切丁寧に教えていただきました。少しくらい恩返しできたのではないかと勝手に思っております。新人賞に恥じることのない、いい役者になれるよう日々精進いたしますので、どうぞこれからも応援のほど、よろしく申し上げます。
特別賞 由紀さおりさん
このような晴れやかな場に立たせていただく機会をお作りいただきまして、本当に嬉しく、感謝を申し上げます。由紀さおりという名前をいただいて、『夜明けのスキャット』でデビューして55周年。「新しいわたし」というタイトルのコンサートが3月にスタートしたばかりです。1年間を通して、新たな挑戦をする、そういう内容のステージを1年間やらせていただく準備を進めております。そんな折に特別賞をいただくという朗報をちょうだいたしまして、頑張りなさいと背を押していただいたような思いです。
功労賞 林与一さん
私を推薦してくださった選考委員の方々、また評議委員の方々、理事の方々にお礼を申し上げます。(初代理事長の)松尾國三さんにはかわいがっていただいて、思い出がたくさんあって…話し出したら数時間話してしまうほどですが、今日は1分のスピーチだというので。私は昭和32年、15歳で初舞台を踏み、今日の82歳まで67年間、舞台を勤めてまいりました。老いぼれてくるとどこで幕を引こうかなと思っていたところを、こんな素晴らしい賞をもらったので、幕を引かずにもう少し歩いてみようと思っております。頑張っていきたいと思います。
(2024,04,02)
photo&text:Maki Shimada
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