7月に大阪松竹座で上演される「七月大歌舞伎」で初代中村萬壽さん、六代目中村時蔵さんが襲名披露を、そして、時蔵さんのご子息の五代目中村梅枝さんが初舞台を勤めます。
昼の部では、初代中村萬壽襲名披露、五代目中村梅枝初舞台として、義太夫狂言の名作『恋女房染分手綱 重の井』を上演し、萬壽さんが乳人重の井を、梅枝さんが自然薯の三吉を勤めます。また夜の部では、六代目中村時蔵襲名披露として『八重桐廓噺 嫗山姥』の荻野屋八重桐を時蔵さんが初役で勤めます。 今回、NorieMでは、六代目中村時蔵さんへ、襲名について、大阪松竹座「七月大歌舞伎」への意気込みについて、そしてファッションについても語っていただきました!!

 

ー襲名のお話を聞いた時のお気持ちを教えてください。
最初は戸惑いがありました。父は死ぬまで時蔵だと思っておりましたし、僕自身もまだ時蔵を襲名するには早いと思っていました。お話をいただいたのが、コロナ禍の真っ只中でしたので、興行がどうなっていくのか全くわからない状況のなか、2年ほどは「まだ僕には早い」と考え、父にもそのように伝えておりましたが、周りの皆様にもご相談させていただきながら背中を押していただき、お受けしました。

 

ー襲名が決まったときのお気持ちを一言で表現するとどんな言葉になりますか?
「もう逃げられない」というのが一番大きかったと思います。

 

ー時蔵を襲名して変わったと感じるところはありますか?
周りの皆さんの呼び方や接し方が変わってきていますが、僕自身は変わったところはないと思います。

 

ー大切にされている古典の演目の魅力はどんなところにあると感じていらっしゃいますか?
感情の表現の仕方が、歌舞伎ならではの手法を用いていて、初めてご覧いただく方にも心の深いところに残るような表現が古典の魅力です。長い時間をかけて、数百人、数千人の方がひとつの演目に携わってつくりあげてきている舞台ですので、幕が閉まって、「ああ楽しかったね。」で終わるのではなく、帰りの電車の中でもふと思い出せるような魅力があると思います。扱うテーマは普遍的なものが多いので、現代の方にも通じるものがたくさんありますし、歌舞伎をすごく難しいと思っていらっしゃる方も多いと思うのですが、全然そんなことはなくて、わからないところはわからないで私は構わないと考えています。難しいと思って入ると、一言一句聞き逃すまいと観るので、それでは楽しめないと思いますし、ニュアンスで感じてもらえればいいと思います。

 

ー歌舞伎というとお衣裳もやはり目が奪われますね!!
舞台芸術ですので、特に歌舞伎の衣裳は柄も大きく、色合いも華やかになっています。 衣裳は着ると重いですが、昔に比べると随分軽量化されていると思います。歌舞伎の衣裳は江戸時代を題材としているものが多いので、その時代にあった生地、柄、色味というものを踏襲していますね。

 

ー時蔵さんが歌舞伎役者として舞台に立つときに大切にしていることはどんなことですか?
たくさんあるのですが、やはりお客様に喜んでもらいたいということが大前提ですね。これは間違いないです。また、目の前にいるお客様のためだけに芝居をしないようにしています。舞台というものはある意味異世界みたいなところで、例えば歌舞伎座だったら、皆さんが江戸時代にタイムスリップをして、その時代にいるような感覚を与えることができる大きな箱だと思っています。そのため、現実的ではない 何かもっと大きな存在に向かって芝居をするようには心掛けています。それを見てお客さんが感動してくださる、面白かったと言ってくださる。これが理想です。

 

ー今回の公演でご子息の梅枝さんへ期待していること、楽しみにしていることを教えてください。
期待していること??…中間テストが近いって言っていたから勉強を頑張って欲しいですね(笑)。

 

ー舞台の方はどうですか?
舞台の方は何もありません。本当に良くやっています。とにかく元気に休まないで舞台に立って欲しい。それだけです。うまくやって欲しいといは思ったこともないです。元気いっぱいな子供を見ているだけで、お客様は喜んでくださって、元気をもらえますよね。それが子供の特権ですので。うまくやらせようとすると、そういうところが無くなってしまうので、元気よく台詞を言って、大きく動いてくれれば私はそれで全然構わないと思っています。

 

ー大阪松竹座での「七月大歌舞伎」公演に向けて意気込みをお願いします。
かなり久しぶりの大阪で、大阪松竹座で父、息子と3代で襲名披露と初舞台をさせていただけることをとても嬉しく思っています。「関西・歌舞伎を愛する会」の45周年を祝う意味でも良い公演ができたらと思っています。

 

ー最後に改めて7月公演の見どころと読者の皆さんへメッセージをお願いします。
私が襲名披露狂言として上演させていただく『八重桐廓噺 嫗山姥』は、我々時蔵家がとても大事にしている演目のひとつでして、父も祖父も曾祖父も長年勤めてきた役ですので、心して取り組みたいと思います。 演目としてはとても華やかで、様々な役柄の人が出てきて、ちょっと面白いところもあり、立廻りもあって、どなたにも楽しんでいただける演目だと思います。昼の部では、『恋女房染分手綱 重の井』で父が乳人重の井を演じます。そこに三吉という子供の役が出てきまして、それをうちの息子の梅枝が勤めます。三吉は、歌舞伎の子役の中では三本の指に入るぐらいとても難しい役で、今から教える心労があり大変なんですが…一所懸命頑張ってやってくれると思います。皆さんのお力を借りて、7月の大阪松竹座公演を無事に乗り切りたいと思います。ぜひ大阪松竹座へお越しください。


▶︎時蔵さんのファッション事情◀︎
ーご取材のときの衣裳のお気に入りポイントを教えてください。
僕たちスーツってあまり着ることがなくて、初日の時や取材の時にだけ着るので、たくさん持っている方ではないと思うのですが、このスーツは色味が気に入ってまして、ボタンの色も珍しい色で気に入っています。

 

ー普段はどのようなファッションスタイルが多いですか?
普段はとてもラフです。身体を締め付けられることが嫌いなので、ゆったりした物を着ています。あとは、子供が生まれてから汚れることも増えたので、スポーツウェアを普段着として使っていることも多いですね。最近ではスポーツウェアが市民権を得ているのでとてもありがたいですね!!(笑)

 

ー最近のお休みの日の楽しみを教えてください。
ゲームですね。RPGをやることが多くて、先日ファイナルファンタジーVII リバースをやっとクリアして、弟からユニコーンオーバーロードというシミュレーションRPGゲームを借りているのですが…今はできないので、7月に大阪で時間ができたらやってみようかなと思っています。あとは子供と一緒にずっとツムツムをしています。

 

【profile】
中村時蔵/Tokizo Nakamura
1987年11月22日生まれ。東京都出身。
1991年6月に歌舞伎座『人情裏長屋』鶴之助で初お目見得、1994年6月に歌舞伎座『幡随長兵衛』倅長松と『道行旅路の嫁入』旅の若者で4代目中村梅枝を襲名し初舞台。2007年には、パリオペラ座歌舞伎公演に参加。2009年にはモナコ歌舞伎公演に参加。近年では古典の大役にもたびたび抜擢され、活躍の場を増やしている。

■公式ホームページ
https://www.tokiyorozu.com/

photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Akiko Yamashita


【公演概要】
■タイトル
大阪松竹座7月公演 関西・歌舞伎を愛する会 結成四十五周年「七月大歌舞伎」
■日程・会場
2024年7月3日(水)~7月26日(金) 大阪松竹座.
昼の部 午前11時~  夜の部 午後4時~
■公演公式ホームページ
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/osaka/play/887

(2024,07,01)

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CHECK①!!

下記のリンクのインスタグラムに中村時蔵 さんのインタビュー撮影時のアザーカットを公開いたします!!お見逃しなく!!

https://www.instagram.com/noriem_press/