役者として多くの舞台、映像作品に出演し、数多くの舞台のプロデュースを手がける宮下貴浩さんと、日本武道館で開催された『演劇ドラフトグランプリ2023』では初参加にして見事グランプリを獲得するなど、注目の劇作家の私オムさんが2018年からライフワークとしてオリジナル作品を上演する宮下貴浩×私オム プロデュース 第8回公演「月農」がまもなく初日を迎えます。NorieMでは、主演を務める和田雅成さんに作品への想い、さらにファッションについてお話をうかがいました。

 

―『月農』出演への想いを教えてください。
この作品は、宮下貴浩×私オム プロデュースと謳っていまして、二人とはもともと知り合いで、ずっと「出て欲しい」と言っていただいていました。僕自身、オム君も宮下さんも好きなので、やっとこの時が来たなという感じです。

 

ー前から構想があったとお聞きしましたが、満を持してという形ですね。
そうですね。実はそんな話もしていたんですよ。満を持して感が出てしまうので、肩の力を抜いて、いつも通りやろうねと。そうは言っても僕らは真面目に、しっかりと作品に向き合っているので、空回りしてしまうのも嫌なので、 いつも通りの1本をやろうねと話しました。

 

ー作品のビジュアルがとても幻想的で素敵ですが、撮影時のエピソードを教えてください。
ビジュアル撮影は、実際に長野県の畑を借りて、いろいろな撮影をしました。ビジュアルとして出しているカットは、ほぼ加工をしていなくて、衣裳もドロドロになっていますが、実際にそこにある土を濡らしてオム君と宮下さんがつけてくれたんですよ。撮影をしている中で、多分オム君の構想の中に懺悔しているシーンのイメージがあって「ドロドロになりながらも懺悔してる絵を撮りたい。懺悔してる気持ちでやって欲しい」と言った瞬間に後ろから本当に光が差してきて、その瞬間にこの舞台は成功するなと思いました。

 

ー今回のカンパニーで和田さんが座長を務められますが、座長として心がけていることや意識していることはありますか?
初めて座長を務めた時には、今まで出演した作品で座長をやってくれていた人で、素敵だなと思う人の何人かを見習って、そういう風にした方がいいのかな? とか考えたりもしましたが、結局僕は僕なので、良いところを真似しつつも、肩肘張らずに、自分がしっかりとその作品に向き合う姿勢を見せて、1人の人間として魅力的であればいいなと思っているので、今は特別に意識することはないです。ただ一番上に名前があって、真ん中に立ってるだけです。それが別に端であろうが中間であろうが想いは変わらないですね。

 

ー舞台への想いや作品へ臨む姿勢はいつも同じ気持ちでいらっしゃるんですね!!
そうですね。どこであろうが絶対に手は抜かないですし、作品にかける想いは変わらないです。

 

ー仲間にかける想いも同じですか?
そうです。とは言いつつも、 他の人のことを気にかけるというとすごく偉そうですが、「みんな幸せかな?」 とか気になりますし、何か困ってる人がいたら助けたいなと思います。 その想いもどのポジションであっても変わらないですね。

 

ー多くの舞台作品へ出演されている和田さんが感じる舞台の魅力はどんなところですか?
舞台を観る側で言うと、観た後の多幸感です。初めて舞台を観たときは、生身の役者がそこで役として生きて、汗や涙を流して、そこに魂が存在していることにすごい衝撃を受けました。実際に僕が舞台に立った時にも生きていると実感できたのを今でも覚えています。舞台に立つということは簡単にできるものではないですし、しんどい思いして、楽しい思いして、いろいろな思いをして、そこに立って、その役が抜けて日常に戻っていく訳ですが、非日常と日常を行き来することによって生まれる「生きる」ということが演じる側として感じる舞台の魅力だと思います。

 

ー和田さんが役者として舞台に立つ時に大切にしてることはどんなことですか?
どんなことだろう。家族やこれまで支えてきてくれた身近な人、そして一番大切なのはお客さまです。舞台はお客さまに観て頂かないと何も意味がないと思うので、そういう部分も意識しますし、 あとは板の上ではできる限り嘘をつかない。演劇は嘘から始まってるものなので、できる限り嘘をつかない人でありたいですね。

 

ー今回和田さんが演じる役では、実際の名前はありつつも別の名前で生活をしているという役ですが、ご自身と共通すると感じるところはありますか?
嫌なことから逃げたいし、答えを出さないというところは共通する部分だと思います。最近はだいぶ答えを出すようになりましたけど、昔の僕は自分に火の粉が振りかからないように生きてきてたなと思います。27歳ぐらいで僕の中ではミラクルと呼んでいる性格がガラッと変わる時期があって、その前まではそういう人でした。

 

ーご自身でも感じるくらいに性格がガラッと変わるきっかけはあったのですか?
この世界をやめようと思ったんです。当時2.5次元の舞台に注目が集まり、波が来た時でした。その反面SNSの反応や反響がすごかったんです。その中には自分の言葉や行動が意図とは違う解釈で捉えられてしまうことがありました。僕はお客さまに元気になって欲しい、笑顔になって欲しいという想いでやってきましたが、その状況で、自分の家族が悲しんでいるのを見て、この仕事をやっている意味や人に幸せになって欲しいという思いよりも、ここにいる意味がない、この場が好きではなくなりそうだと思っていた時期を過ごしていました。そんなときに、宮本亞門さんと作品でご一緒し、亞門さんが61歳を迎え、「私は60歳を迎えたから今から赤ちゃんになれるんだよね。今から私は1歳のつもりで生きていくんだ」とお話されたのを聞いて、演出家さんとして大成功されてるのに、今からまだ新しいもの作り自分を生まれ変わらせようとする生き方がすごくかっこいいなと思いました。そして、僕が定期的に読んでいる漫画「ワンピース」の中のルフィーが目指す海賊王の定義が「この海で一番自由なやつが海賊王」で、亞門さんのお話とルフィーの考え方が僕の中で合致して、現実世界と非現実世界の2つの考え方が同時にすっと入ってきました。その時に僕も自由に生きようと思い、その瞬間に僕の性格が変わりました。発言から態度、すべてが変わったので、当時は驚いた人もいると思います。自分が楽になりましたし、強くなりましたね。

 

ーこの作品のように誰かの新しい人生を生きるとしたらどうしたいですか?とお聞きしようと思っていましたが、もう新しい人生を始められたんですね!!
そうですね。でもまだ生まれ変わりますよ。他の人の人生を生きたいとは思いませんが、僕自身33歳になって、こういう人生もやってみたかったなと思うのは、格闘技ですね。僕は格闘技が大好きなので、幼い頃にをやっておきたかったなと思います。音楽もそうですが、今からでも遅くないと思うので、ギターを始めてみたり、格闘技を今やってみたりしています。

 

ー格闘技を始めたんですか?
はい!!格闘技を見ることも大好きで、やっている方たちへのリスペクトを上げるためというのもありますが、僕たちは身体を動かす職業ですので、身体の切れを上げパンチやキックのリアリティを上げることを意識しています。音楽で言うと今年、ありがたいことに自分名義で初めて曲を出すので、そこはある意味生まれ変わった自分だと思うし、生まれ変わらせないといけない自分なので、また新しい自分に生まれ変わるんじゃないかなと楽しみにしています。

 

ーご自身の意思で新しい自分に生まれ変わっていけることに喜びや充実感はありますか?
そうですね。人生1回のはずなのに何回も楽しめるなと思います。僕の幼い頃に最初に抱いた夢がプロ野球選手だったのですが、それが10月に始まる「バントマン」というドラマの中で、中日ドラゴンズの選手になるんですプロ野球選手になったわけではないですが、実際にユニフォームに袖を通して、球場に立つという夢が叶っていて、いろいろな夢が叶ったり、何回でも新しい人生を生きることができているという実感につながるので、役者というのは本当に幸せな職業だと感じています。

 

ー和田さんから見た宮下さんの魅力は?
ご本人が面白いというところに通じるのかもしれませんが、どの舞台を観に行ってもそのポジションを任されることが割と多くて、そういうイメージを皆さん持っていると思うのですが、僕は彼のシリアスな芝居の方が好きなんです。僕が役者として、舞台を観に行ったときに、シリアスなところをどれだけリアリティを持って、嘘をつかずにできてるかという部分を素敵だと思うタイプなので、そこもできて、笑いもできる、そこは本当にすごいし、尊敬できる部分ですね。

 

ーこの作品に出演することで楽しみにしてることはありますか?
私オム君が演出している作品をたくさん拝見している中で、本当に素敵だなと思う作品が多くて、舞台作品でご一緒するのは初めてですので、そこに自分が入ってその世界の中で生きることが楽しみです。

 

ー最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
舞台はお客さまにご覧いただいて成立するものだと思っています。僕たちの想いだけではなくて、舞台を観ることでお客さまそれぞれの人生に潤いや彩りを添える機会であって欲しいと思いますので、そうなるように僕たちは全力でこの作品に向き合います。そして、これからもお客さまと一緒に支え合っていきたいなと思うので、皆さんの支えになれるように今回も頑張ります。


▶︎和田雅成さんのファッション事情◀︎
ー今日のお衣装のお気に入りのポイントを教えてください。
僕はブルーが好きなので、このスタイルは即決でした。濃いブルーというよりは淡いブルーが好きですね。

 

ーどんなファッションスタイルが好きですか?
普段もそうですが、ジャージとかもセットアップでないと気持ちが悪いくらいにセットアップが大好きで、ほぼセットアップです。アクセサリーにも最近興味が出てきて、きっかけは、時計に興味が出たことで、時計を買った時に、指輪やネックレス、イヤーカフとかいろいろなものを買いました。

 

ー秋といえば芸術、ファッション、読書などありますが、和田さんにとって秋といえば?
秋といえば食べ物かな?ここ何年か前まで、食に興味がなくて、何を食べても一緒だったんですよ。でも最近食に興味がでてきましたね。

 

ー興味を持つきっかけがあったのですか?
ファッションもそうですけど、買い物とか食事に行くのも、宮下さんばっかりなんですよ。おしゃれだし、いろいろなところを知っていて、一緒に出かけた先で美味しいもの調べてくれて、ここ行ってみようと食事に結構行くようになりましたね。

 

ーそうなると楽しみが増えていきますね!
そうなんですよ。最近では 2人で銀座の方に買い物行った後に入ったお店のポテトサラダがすごく美味しくて、あん肝とかあんまり普段食べなかったんですが、すごくおいしかったですね。

【profile】
和田雅成/Masanari Wada
1991年9月5日生まれ、大阪府出身。
主な出演に、舞台『刀剣乱舞』、ミュージカル『ヴィンチェンツォ』などのほか、MX「その結婚、正気ですか?」、日本テレビ「あいつが上手で下手が僕で」シリーズ、MBS「REAL⇔FAKE」シリーズなど映像作品でも活躍。主演ドラマ「神様のサイコロ」が10/9(水)よりBS日テレ、テレビ神奈川、テレビ埼玉、千葉テレビ(毎週水曜日23:30〜24:00)にて放送中。ドラマ主題歌でもある1st Maxi Single「Dice」も9/25(水)に発売。また、12/11(水)には1st Album「Raise」の発売が決定。2025/2/8(土)には、自身初のワンマンLIVEとなる1st ONEMAN LIVE「Raise」の開催も決定している。そのほか、2025年には舞台「花郎~ファラン~」や舞台「きたやじ オン・ザ・ロード〜いざ、出⽴!!篇〜」への出演を控える。
■公式ホームページ
https://wadamasanari.com/
■公式X
@masanari6

photo:Tsubasa Tsutsui/styling:Masaki Ogura/hair&make-up: Mao Onuki/interview&text:Akiko Yamashita


【Story】
月が照らす光。雲が薄くゆったり流れている。
一面畑のその村には月の光が届かない。暗い畑にひとりの男の姿。

渇いた処に、少しの水を注げば、泥になる。
僕の渇いた心にも、水が注がれた。そして、僕はまみれた。

【公演概要】
■タイトル
宮下貴浩×私オム プロデュース 第8回公演
舞台『月農(げつのう)』
■日程・会場
2024年10月9日(水)~10月19日(土) シアターサンモール
■脚本・演出 私オム
■出演
和田雅成 入来茉里 武子直輝 長谷川かすみ 横山涼 福室莉音 宮下貴浩 植木祥平
■公式ホームページ
https://www.ruby-parade.com/lp/miyaomu8/

(2024,10,07)

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下記のリンクのインスタグラムに和田雅成さんのインタビュー撮影時のアザーカットを公開いたします!!

お見逃しなく!!

https://www.instagram.com/noriem_press/