2022年7月に開幕し、2024年8月に総観客数100万人を突破、同年11月に通算1000回公演を達成したロングラン作品、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、2025年3月以降の公演再延長が決定し、TBS赤坂ACTシアターには連日多くのファンが公演に足を運ぶ人気作。
小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー·ポッターとその息子·アルバスの関係を軸に描かれる新たな冒険物語は、世界中で多くの演劇賞を獲得するなど好評を博し、第48回菊田一夫演劇賞では、高い舞台成果を評価され菊田一夫演劇大賞を受賞しました。
NorieMでは、2022年の東京公演の開幕からマクゴナガル校長を演じる榊原郁恵さんに作品の見どころや役への想い、そしてNorieMならではのファッション観についてもお話をお聞きしました。
ー『ハリー・ポッター』を初めてご覧になったときの印象とその時どんなところに魅力を感じましたか?
最初に『ハリー·ポッター』を観たのは映画でした。その時はまさか自分がこの作品をするとは思っていなかったですが、幼少期から成長していってみんなの友情が濃くなり、最初は恐るべき存在だった方が、意外にも仮の姿でずっとハリーを見守っていたり、深みのある本なんだと感じ感動しました。
ーファンタジーだけでなく、メッセージが込められていて、自分にもこういうことってあったなと考えさせられながら拝見できる作品ですね。
そうですね。この作品が舞台化され、自分がそのメンバーに加わったというところから見方になると、プラスアルファが入ってきて、最初は見逃してしまったところも、もう1回見直すと新たに感じるところもありますね。
ー郁恵さんが演じるマクゴナガル校長は冷静でありながら愛があると感じました。演じている時に意識していることはありますか?
マクゴナガル校長として、舞台『ハリーポッターと呪いの子』の中で存在するシーン自体はそれほど多くなく、この場面、また時が経ってこの場面、更に時が経ってこの場面という形で、時間が前後する場面での登場の仕方です。まずは映画の世界の皆さんが知ってる「ハリー·ポッター」の世界の中に存在しているマクゴナガル先生を演じたデイム·マギー·スミスさんの存在感、イメージが強いので、私もそうですが、皆さんもそのイメージが出てくるだろうと思いますので、そのイメージをすごく大事にしてます。そしてこの作品は、映画から10何年後の世界を描いていて、ダンブルドア先生もいらっしゃらなくて、マクゴナガルも校長として存在します。とても寛大で、チャーミング、でも怒る時にははっきりとビチッとまるで昔の母親のような存在で、感情的なことではないという立場が、この舞台に描かれてるマクゴナガル校長なんだろうなと思って演じています。
ー現在ハリーを平方元基さん、吉沢悠さんが演じていらっしゃいます。お二人のハリーはどんなハリーですか?
この作品が上演された最初の1年目、2年目の後半、そして今回3期の皆さんと初日から出演していますが、皆さん違いますね。私自身も3年分の歳を重ねているということもそうですが、ハリーは若返っていくような感じがします。ハリーは、37歳の設定なので、キャストも実際のハリーの存在に近くなっている印象がありますね。元基くんのハリーは、優しいお父さんでありながらも、お父さん像が分からないがゆえにすごく模索しながら、時には弱い自分をジニーには見せるところが印象的です。そして、吉沢さんは、強いハリーです。ハリーが大人になって、自分の置かれてる立場もあり、威厳を出そうとして強く、たくましい存在でいようというハリー·ポッターを演じてるような感じがするんです。だから時には本当に強すぎて、自分の考えを誰からの助言も聞くことなく、突っ走っていく様が、マクゴナガル校長と話をしているところでも、昔のようにどんどん突っ走って何か大変なことをしでかすのではないかとハラハラします。後々なんとかなるんだけれど、それでも聞く耳持たないハリーという強さが吉沢さんのハリーにはありますね。
ーやはり演じる相手が変わると郁恵さんの演技や対峙する気持ちも変わってくるんですね!
そうですね。本筋は変わらないにしても、芝居というのは相手とのやりとりなので、常に自分が舞台に出るまでの皆さんとのやり取りや舞台の流れも見て、今日はどんな感じかなと自分の中でも空気感をしっかりと感じ取るように意識しています。
ーこの作品もロングランで続いてますが、郁恵さんにとって演じること、舞台に立つことの魅力とはどんなところでしょうか?
失敗も成功もその日の調子も含めてその瞬間のすべてが生であって、その生の瞬間が舞台の最大の魅力だと私は思うんです。 その瞬間の出来事を皆さんに生でご覧いただけるということだと思います。最初はそれがやはり理解できなくて、「いいものを見せよう」「100点満点のものを毎日毎日見せたい」と思って、失敗するとすごく落ち込んでしまったり、「今日は大丈夫かな?」とすごく心配することもありました。その時に主人から「ハプニングがあったら、それこそその時の生の体験をお客さんも見れたっていうことで、これが舞台の醍醐味なんだよ。恐れることはない」と言われた時に舞台に対する心構えが急に変わりましたね。お芝居っていうのはその目の前にいらっしゃる人との物語の展開、繰り広げ方なので、同じセリフを何百回とやっていても、その時の心の動きを大事に、新鮮であり続けたいと思っていて、そこはすごく繊細に意識して毎回舞台に立つようにしています。
ー舞台の前に劇場に到着した時にはどう過ごされていますか?
ルーティンがあるので、そのルーティンを作って崩さないようにしています。
ーすることはルーティンでも心は常に新鮮さを保っていらっしゃるんですね!
それが一番難しい作業ですね!準備する時間はルーティンが決まっていて、なるべくそこを守っていきたいけれど、気持ちの鮮度は失わないように過ごしています。
ーこの作品を通して郁恵さんが届けたいメッセージを教えてください。
苦しむということもすごく辛いことではなくて、その人生を生きていく上でもとても大事な経験です。人生いろいろなことがあるのが楽しくて、そして一番大事なのは家族や友達がいるということで、それがどれだけ素晴らしいことか。そういう人たちの愛の大きさやその存在があればどんなことを経験しても、いずれはちゃんとまっすぐに生きていけるという壮大なテーマがあるような気がしています。
ー最後にまだまだ公演は続きます。意気込みをこめて読者の皆さんへメッセージをお願いします。
3年目のチームもやっとここまで来ました。日々、私も含めてキャストの皆さんがこの作品は素晴らしい舞台だっていう自負を持ち、探究心を持って臨んでいます。キャストが変わると雰囲気も変わり、そこも楽しめると思いますので、ぜひ一度ご覧いただけたらありがたいなと思います。そしていろんな感想が出るのをすごく楽しみしてます。その感想でまた私たちも成長させてもらえるので、たくさんの感想も聞かせていただけたらなと思っています。
▶️榊原郁恵さんのファッション事情◀️
ー撮影衣裳のお気に入りポイントを教えてください。
最近は、スカートでも長めのスカートが主流になってきていて、シルエットもタイトではないものが多くなってきましたので、パンツよりはワンピースとかスカートが多いので、今の着たいイメージにぴったりでした。
ーカラーもグリーンとかが多いですか?
私は黒の洋服ってほぼ持っていないんです。60歳を過ぎてから柄物やちょっとカラフルなもの、靴でも赤い靴とか、恥ずかしくなく履けるようになりました。20代の時にお洋服屋さんでかなりご高齢の方が赤いジャケットを買って帰られたのを見て、「赤のジャケット?着るの恥ずかしいなぁ」って思ってたのですが、「60歳を過ぎたおばあちゃんがあんな赤い洋服を着てさ、それで颯爽としていたらかっこいいと思わない?」と聞いて、「なるほど!私も年齢を重ねたときに、そういう自分になれたらいいな。でもまだまだ遠い先っだな」て考えていましたけれど、実際にその年代になると、やっぱり赤い靴とか。赤いジャケットとか恥ずかしげもなく着れるんだって。 自分でびっくりしてますね。
ー郁恵さんのおすすめの冬の過ごし方を教えてください。
温かいものを食べて、お風呂に入るっていうのはどれだけ大事かということです。面倒なときはシャワーで済ませてしまっていましたが、お風呂で湯船に浸かると、自律神経もしっかり整えられます。そこに今はお塩を入れていて、塩を入れることによって発汗作用があり、汗はあまりかかないですけど、でも湯冷めもしにくくなりました。そして温かいものを食べたり、飲んだりして、体の中に入れていくのが、一番だなと思います。身体が温まると、外の冷んやりとした空気が気持ち良かったり、寒空をパッと見上げた時の綺麗な星空を見てこんなに清々しい気持ちになるんだなって思うくらい感動します。若い時は薄着だったり、寒くても我慢してそのままにしてしまいがちですが、やはり身体が資本です。まず身体を整えることが大事なので、温かいお風呂に入って温かいものを飲んで、体調を整えてとても綺麗な星空を見るというのが冬の楽しみかもしれないですね。
ー郁恵さんが素敵でいるために気をつけていることを教えてください。
長いこと生きているといろいろな人を見て、いろんな方々を見る力も少しついてきます。私の周りには素敵な人がたくさんいらっしゃいます。そうすると自分はあれもできない、これもできないとできないことを見つけてどんどん縮こまって窮屈になって周りが羨ましくなって潰れてしまいます。そうならないように、やはり人と比較して無理をせず、自分の良さを少しずつ自分で見つけること、それから一番自分が楽でいられる瞬間を見つけること。そうしていくと楽に前を向いて日々過ごしていけると思います。
【profile】
榊原郁恵/Ikue Sakakibara
1959年(昭和34年)5月8日生まれ。神奈川県出身。B型。
第1回ホリプロタレントスカウトキャラバングランプリを受賞、1977年「私の先生」で歌手デビュー。「夏のお嬢さん」「ROBOT(ロボット)」などの楽曲をリリース。NHK紅白歌合戦にも6回連続で出場するなど、トップアイドルとして活躍する。
1981年、ミュージカル『ピーターパン』にて初代ピーターパン役を演じ、ゴールデン·アロー演劇賞および大賞を受賞。
以後、同役を7年間にわたって演じる。現在はテレビドラマや映画、舞台への出演にとどまらず、バラエティ番組への出演など幅広く活動している。主な舞台出演作に、舞台『サザエさん』『ヒロイン~女たちよタフであれ!~』『雪まろげ』『舞妓はレディ』など。
■公式Instagram
https://www.instagram.com/sakakibara.ikue/
photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Akiko Yamashita
Dress:Cucina/Earring:Kinoshita pearl/Ring:NINA RICCI(エスジェイ ジュエリー)
【STORY】
ハリー、ロン、ハーマイオニーが魔法界を救ってから19年後、かつての暗闇の世を思わせる不穏な事件があいつぎ、人々を不安にさせていた。魔法省で働くハリー·ポッターはいまや三人の子の父親。今年ホグワーツ魔法魔術学校に入学する次男のアルバスは、英雄の家に生まれた自分の運命にあらがうように、父親に反抗的な態度を取る。幼い頃に両親を亡くしたハリーは、父親としてうまくふるまえず、関係を修復できずにいた。そんな中、アルバスは魔法学校の入学式に向かうホグワーツ特急の車内で、偶然一人の少年と出会う。彼は、父ハリーと犬猿の仲であるドラコ·マルフォイの息子、スコーピウスだった!
二人の出会いが引き金となり、暗闇による支配が、加速していく…。
【公演概要】
■タイトル 舞台『ハリー·ポッターと呪いの子』
■日程·会場
上演中~2025年10月31日(金) TBS赤坂ACTシアター
■出演
ハリー·ポッター:平方 元基/吉沢 悠 稲垣吾郎*/平岡祐太*
ハーマイオニー·グレンジャー:木村 花代/豊田 エリー/酒井 美紀
ロン·ウィーズリー:石垣 佑磨/ひょっこりはん/矢崎 広
ドラコ·マルフォイ:内田 朝陽/永井 大/姜 暢雄
ジニー·ポッター:白羽 ゆり/大沢 あかね
アルバス·ポッター:佐藤 知恩/渡邉 蒼
スコーピウス·マルフォイ:西野 遼/浅見 和哉/久保 和支
嘆きのマートル:出口 稚子
ローズ·グレンジャー·ウィーズリー:飛香 まい
デルフィー:鈴木 結里/乃村 美絵/高山 璃子
組分け帽子:尾尻 征大
エイモス·ディゴリー:間宮 啓行
マクゴナガル校長:榊原 郁恵/高橋 ひとみ
秋山 和慶/安藤 美桜/荒澤 恵里奈/チョウヨンホ/半澤 友美/隼海 惺/久道 成光/星 郁也/伊藤 優佑/亀井 陵市/柏村 龍星/北代 祐太/小結 湊仁/倉澤 雅美/黒田 陸/松尾 樹/馬屋原 涼子/仲本 詩菜/小川 希/岡 直樹/織詠/大竹 尚/篠原 正志/高橋 英希/手打 隆盛/上野 聖太/薬丸 夏子/横山 千穂
ルード·バグマンの声 吉田鋼太郎
※* は2025 年7 月以降の公演に出演するキャストです。
■上演時間 3時間40分 ※休憩あり
■主催 TBS ホリプロ ATG Entertainment
■特別協賛 東海東京フィナンシャル·グループ
With thanks to TOHO
In association with John Gore Organization
■公式ホームページ
https://www.harrypotter-stage.jp/
(2025,03,04)
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