大正から昭和にかけてふたりの男女の俳人の機微を描いた、劇作家 ⻄史夏さんが脚本を手掛ける『ナイト・ウィズ・キャバレット』が2月に上演されます。
演出は、脚本に演出にと近年自身のユニット「あやめ十八番」のみならず多くのプロデュース公演で大活躍中の堀越涼さんが務め、 男女の俳人を剣幸さん、小林タカ鹿さんが演じます。NorieMでは、五所踏子を演じる剣幸さんに公演への意気込みや役作りについて、さらにはファッション事情までたっぷりお話を聞きました!!
ー芸能活動50周年という記念の年になりますが、この作品への出演の決め手はどんなことだったのでしょうか?
台本を読ませていただいて、すごく面白いと思いました。二人芝居って役者の格闘技みたいな感覚があって、今までにも何回か経験があり、あの感覚をまた味わえると楽しみになりました。ふたりで作りあっていくもの、バトルしていくもの、それが人間の考え方や世界情勢であったり、年代によって変わってくる心情をふたりだけで演じる点、それをうまく表現できたらいいなと思っています。50周年の記念だからということよりも、この作品に巡り合わせていただいたことにすごく感謝しています。ただ、この年齢で膨大なセリフを覚えられるのか?という不安はありましたが、お相手の小林タカ鹿さんと演出の堀越涼さんと3人で、今までにない二人芝居だねと言っていただけるような素晴らしいものになったらと話しています。
ー剣さんが立ち続ける舞台の魅力とはどんなところだと感じていますか?
なんでしょうね?1ヶ月から1ヶ月半かけて、何にもないところから1つのものを皆さんと一緒に作り上げる面白さですね。これはテレビや映画では味わえないものです。映像のお仕事ですと、お話しの流れ通りに撮っていくことは、難しいんです。撮るシーンの内容が前後することもある。だからものすごく瞬発力が必要となります。演劇の場合は、始まったら最後まで走り抜ける一発勝負。舞台にあげるまでに、みんなで意見を戦わせながらひとつずつレンガを積み上げていく、その過程が、私は大好きです。相手の出方に寄って、自分も変わっていくその一瞬に生まれるなんとも言えない感覚や、肌で感じられるお客様の息づかいは、舞台の醍醐味です。
今は、配信や映像化されたり、昔とは舞台を取り巻く環境は変わってきましたが、それでも劇場で観たいと足を運んでご覧いただくことがとても貴重なことですし、ご覧になった皆さんが「ずっと記憶に残っています」とか、「力になりました」と言ってくださることが我々の喜びです。だからこうして続けられているのかなと思います。
ー長い芸能生活の中で途中で辞めたい、辛い、嫌だなと思うことはなかったですか?
辞めたいと思ったことは一度もないんです。私は宝塚に入った時何も出来なかったので、“出来ない”というところから始まっています。劣等生だったからこそ舞台へ出していただけるだけで幸せでしたね。辛かったのは骨折をしたときかな。それでも何とか治療をして出演できたので、今まで舞台に出演できなかったことは一度もないんです。舞台は皆勤です。高熱があっても怪我をしてても、休んだことはないです。もちろんそういう状態ですので、みんなと同じように踊れないという辛さはありました。付けられた振り通りに踊れない、それが悔しいな、辛いなと思うことはありましたが、もうやりたくないと思ったことはありません。できないことが当たり前、「下手くそ」って言われても「はいそうですよね」と納得してしまう(笑)。とにかく自分がこの仕事をさせていただけることが嬉しくて幸せです。気がついたらいつの間にか50年?ていうくらいに何も思わずにここまで来てますから、逆に皆さんから「50年経ったんだよ」って教えていただき、「ああそうか」と振り返るぐらいです。宝塚歌劇団を辞めた時も男役から女優になるなんて、大変だったでしょ? って皆さんに言われたこともありましたが、普通に人間を演じることは、老若男女一緒だと思っていますので、大変とは全然感じていないです。
ー上演に向けて役作りでイメージしていることを教えてください 。
女性という立場であの時代に俳句を作って表現をしていこうという人の苦労や大変さ、心境の変化を21歳から表現していきますので、どうなることやら…!(笑)彼女自身の成長やいろいろなことを経験し、相手との関係性も変わっていく様を伝えられたらと思います。
ー今回ショーのシーンも盛り込まれているとお聞きしましたが、ひとつの作品の中でのシーンの切り替えは流れの中で自然とできていくものですか?
今回は、大正時代の象徴としてキャバレーが出てきます。抑圧された画家や作家、歌手のたまり場です。このシーンで、私は本来の役とは違う人物を演じます。だから唐突に歌い出すわけでもなく、自然と流れのなかに組み込まれていきます。
ー今回は年齢を重ねていくという変化になりますが、そこはまた違いますか?
そうですね。同じ人間が何を得てどう変わっていくか?それは年齢に合わせた外見の変化だけではなくて、自分の生き方がどう変わってきたかも見せていきたい。台本に描かれていない時間をどう過ごしてきたか、それが芝居に反映できていれば、と思っています。
ーその期間の経験を踏まえて次の年齢を演じるということですね。
年齢ごとに人は変わりますし、女性の立場も時代とともに変化していきます。戦争に向かっていく暗いときではありますが、表現者として必死に生きたひとりの俳人女性に共感していただけたら、嬉しいです。
ー相手の小林さんについてはどんな印象でしたか?
すごく顔が小さくてスタイルが良くて、声の良い方です。初めてお会いしたときに俳人の役にぴったりな方だなと思いました。立ち姿もシュッとしていて、世間の人とはちょっと違うタイプの男性で、ものを作る表現者という役がぴったりだなと思いました。
ー演出の堀越さんの印象はいかがでしたか?
第一印象は少年のような方でしたが、お話を聞いていくうちに底知れぬアイデアを持っていて、ピュアなだけに、ベースを大切にしながらすごく自然な形でこの作品を面白くしてくださるんじゃないかなという印象を受けました。
ー最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
花を見て、ただ綺麗だと思うだけでなく、その裏にあるものを見出す感性、力を、俳人を演じることで私自身も養いたいと思っています。この作品が描く世界は、華やかだけど変化も激しい時代。俳優がふたりだけで見せる俳人としての生き方が、この激動の時代にどう変わっていくのか…ぜひお楽しみください!
▶️剣幸さんのファッション事情◀️
ー今日のお衣裳とても綺麗なブルーのシャツスタイルですが、シャツはお好きですか?
好きです。色はブルー系が好きなので、ワードローブはブルーと黒が割と多いと思います。パンツも横にブルーの入ったワイドパンツですごく履きやすくて気に入ってます。
ー普段はパンツスタイルが多いですか?
半分半分くらいでしょうか。スカートのときもありますし、ワンピースのときもありますが、冬はパンツスタイルが多めです。
ー最近買ったお気に入りのファッションアイテムはありますか?
このパンツです!ブルーのトップスに合うなって思って買いました。
ーおすすめの冬の過ごし方や冬と言えばこれ!ということはありますか? 例えばお鍋とか。
鍋!そうですね!でも私は夏でも鍋を食べています!鍋奉行でもあり、灰汁代官‼「灰汁!灰汁!」って言って、灰汁を取り締まってます(笑)。
ー鍋の一番好きなところはどんなところですか?
うわっ!難しいですね。野菜がたくさん摂れるところといろいろな味を楽しめるところですね。今はいろいろな味のスープがあるので、自分の好きな味に何かを足して、オリジナルの味を作り出したり、牛乳を入れてみたり、いろいろなことを試せるのがいいなと思います。1回だと食べきれないお野菜を少しずつ使いながら最終的にはお鍋に使って、最初は薄味のコンソメ味のスープを作り、2日目にカレーにしたり、3日目は鍋やお味噌汁にアレンジしたり、味変でどう変えて美味しくいただくか考えて作っています。残すということが嫌いなので、全部綺麗に食べきるっていうのが私のモットーです。
ー最後に素敵でいるための秘決を教えてください。
ありがたいことに仕事を続けさせていただいてるからだと思います。
コロナ禍を経てだんだん世の中が戻ってきて、こうやって続けさせていただいていることが私の元気の元ですし、生きる喜びです。そのために、しっかりとご飯を食べ、睡眠を取り、体力もつけておかなければいけないなと思っています。ジムやエステに通うわけではなく、日々お家の中で、歯磨きをしながら片足立ちしたり、料理をしながらバレエのルルベ(つま先立ち)をしたりしています。若いときだったらジムに行ったりしていたかも知れないですが、今は、細く長くどうやって続けていくかがすごく大事なので、家の中で適度に身体を動かすことを意識しています。
【profile】
剣幸/Miyuki Tsurugi
3月2日生まれ、富山県出身。
1980年代に宝塚歌劇団月組の男役トップスターとして活躍。代表作と なったブロードウェイミュージカル『ME AND MY GIRL』は宝塚史上 初の1年間の続演となる。 近年は、セルフプロデュースコンサート「kohibumi concert」や、 「NHK短歌」(Eテレ)司会、ラジオパーソナリティ(ニッポン放送、FMとやま)、ディズニー映画「塔の上のラプンツェル」吹替等、活動の幅を拡げている。
主な舞台作品に、 『ハロー・ドーリー!』、『エリザベート』、『この森で、天使はバス を降りた』、『THE MUSIC MAN』、『Indigo Tomato』、『Same Time, Next Year』、8時間に及ぶ大作芝居『繻子の靴』などがある。 第18回菊田一夫演劇賞、第17回、21回の読売演劇大賞優秀女優賞受賞。 「宝塚歌劇の殿堂」顕彰者。
【公演概要】
■タイトル
舞台『ナイト・ウィズ・キャバレット』
■日程・会場
2025年2月13日(木)〜2月23日(日) シアターグリーン Box in Box
■脚本 ⻄史夏
■演出 堀越涼(あやめ十八番)
■出演 剣幸 小林タカ鹿
■公式ホームページ
https://night-with-cabaret.com/
(2025,02,13)
photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Akiko Yamashita
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下記のリンクのインスタグラムに剣幸さんのインタビュー撮影時のアザーカットを公開しています!!
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