宝塚歌劇団 星組トップ娘役として活躍し、退団後も舞台『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』、『千と千尋の神隠し Spirited Away』など話題作に出演し続けている妃海風さん。2025年4月29日(火)から開幕するEXPO2025『未来へのOne Step!〜世界を結ぶ愛の歌声〜』をはじめ、2025年は出演作が目白押しです!! 妃海さんに2025年の数々の出演作への意気込み、そして、ドラマ初出演となったNHK連続テレビ小説『おむすび』の撮影についてなどのお話を聞きました!!

 

EXPO2025『未来へのOne Step!〜世界を結ぶ愛の歌声〜』
―関西万博内のEXPOホールで上演された後、東京、大阪での上演も予定されているこの公演。どのような公演になるのでしょうか?
私は小学生からの宝塚ファンなのですが、その頃に観ていたスターさんたちのほとんどが出演される作品です。宝塚では「タカラヅカスペシャル」という、年末に行われる年に1度のスターさんが集まる祭典がありますが、まさにそれと同じような、スターさんが勢揃いしたステージになります。その中に私も参加させていただけるということは本当に夢のようです。特に真琴つばささんと風花舞さんが私は大好きで、真琴つばささんのファンクラブに入っていたくらいだったので、ご一緒できるのが本当に嬉しいです。女優同士ではありますが、男役と娘役という形で出演できるので、今、(取材当時)呼吸ができないほどドキドキしながら稽古場に通っている日々でございます。

 

―真琴さんとは今回が初共演なのですか?
番組の収録などではご一緒したことがありましたが、舞台上では初めてです。先日、お稽古で初めて見つめ合って歌うというシーンがあったのですが、呼吸が止まってしまうほど、夢のようなシーンがありました。

 

―本番も楽しみですね。
はい。もちろん宝塚ファンの皆さまも夢を持って観ていただけるのではないかと思います。

 

―公演はどのような内容になるのですか?
EXPOでは、これまでの名曲の数々が聞ける作品になっています。もちろん宝塚ファンの方にも楽しんでいただける内容だとは思いますが、万博での上演になりますので、世界各国の方々にも楽しんでいただける内容を目指しております。宝塚と各国にちなんだ楽曲をみんなで歌い継いでいきます。その後の国際フォーラムと梅田芸術劇場での公演は、さらに宝塚ファンの方々に喜んでいただけるような、また違う内容になっていますので、どちらも楽しんでいただけたらと思います。

 

―万博でこうしたショーを上演する機会というのもなかなかない特別なことですよね。
そうなんです。私は、1970年の(日本万国博覧会のシンボルである)太陽の塔の岡本太郎さんが好きで、あの時代の資料や写真集を買っていたので、EXPOに、しかも出身地の大阪で元タカラジェンヌとして参加できるということがとても大きな意味があります。世界各国の方々が集まって期待されているイベントなので宝塚の魅力を知っていただける機会になるといいなと意気込んでおります。

 

―今、お稽古中ということですが、これだけ宝塚出身の方が集まったお稽古場はすごく楽しいのではないですか?
楽しいです!! 毎日が「オールスター感謝祭」のようです(笑)。皆さん、それぞれに当時のファンの方がいるという状況なので、お稽古場がずっとウキウキしている状態です(笑)。演出家の先生も入団前に麻実れいさんのファンだったそうで、みんながファン心理を持った稽古場です。しかも、タカラジェンヌはみんな、もともと熱量が高い方々ばかりなので、パワーが吸い取られないように、自分もエネルギーを出していかないと、ふわふわしてしまいそうな夢の空間です。そんな空間で、お客さまに喜んでいただけるようなショーを作り上げられるよう楽しみながら頑張ります!!

 

ミュージカル『Play a Life』10周年記念キャスト公演
―EXPO2025『未来へのOne Step!〜世界を結ぶ愛の歌声〜』の東京公演と大阪公演の間には、ミュージカル『Play a Life』の特別公演にも出演されます。
初めて拝見したときから、すばらしい作品だなと思っていました。死生観や命を題材にしていますが、(演出の上田一豪が主宰する劇団)TipTapさん特有の温かさがあって、家族と一緒に観ているような感覚になる作品です。楽曲もとても魅力的です。私は、『Bye Bye My Last Cut』という作品で初めてTipTapさんの公演に参加させていただきましたが、そのときも「芝居が大好き。演劇が大好き」という想いが皆さんから伝わってきて、そうした熱量がこの温かさと愛情のある作品を生むのだなと感じました。なので、今回、『Play a Life』にお声がけいただいたことが本当に嬉しかったです。今、お稽古が同時に進行しているので、私は早朝に『Play a Life』を練習しています。朝の新鮮な時間に、心が研ぎ澄まされていくようで、とても良い時間を過ごせています。涙なしでは観られない作品なんですよ。譜面を読みながら涙が止まらなくて。それくらい泣ける作品ですし、歌もメロディも素晴らしいので、稽古をしていて心が満たされます。

 

―三人芝居で綴られるというのもこの作品の特徴ですね。
そうですね。キャストによって全然違うものになるのもこの作品の魅力です。そのキャストのお人柄や人生観が出るのかなと思います。私もこれまでの公演をいろいろと拝見しましたが、キャストが変わると違う作品に感じるくらい違うので、私も今の私の人生経験を生かした『Play a Life』をしっかり丁寧に作っていきたいと思います。

 

―妻という役をどのように演じたいと考えていますか?
台本を読み込んでいる最中ですが、実はまだ客観的には(作品を)見ることができていなくて。台本を読んで泣いている時点で妻の感情にはなれていないということだと思います。今は非現実的でこの経験することができない役を、ファンタジーになりすぎないように、いかに現実に落とし込んで演じるかということ、それからお芝居は嘘ではありますが嘘がないお芝居をできるだけ追求したいと考えています。

 

―確かにファンタジーでもあり、リアルでもある作品だなと感じます。
そうですね。感動しすぎず、ファンタジーすぎない。「現実にもあるよね」という物語を温かみを交えて伝えられたらと思います。

 

―共演の矢崎広さん、黒川桃花さんの印象は?
矢崎さんとは、以前、朗読劇『ラヴ・レターズ』でご一緒させていただいたことがあります。ですが、稽古が1日だけだったので、あまり会話をすることができませんでした。今回はもう少し交流もできると思いますし、ご一緒するのが楽しみです。黒川さんとは初めてです。このキャスト3人で作る世界がどうなるのか。きっと3人が出会ったときの感覚が大事になるかとと思います。

 

―演出の上田さんとのクリエイトでは、どんな楽しみがありますか?
一豪さんは、穏やかに明るく楽しく現場を進めてくださる方ですが、お芝居への熱量が高く、役者1人ひとりの性格や人柄に向き合って役に無理がないように話し合って作ってくださいます。一豪さんと作る現場、特にTipTapさんで前回、ご一緒させていただいたときに、一豪さんとお仕事させていただくと、より演劇が好きになると感じました。こうしてまた、しかも私の大好きな『Play a Life』の10周年という節目でご一緒させていただけることが嬉しいです。

 

舞台『千と千尋の神隠し』

―7・8月には、舞台『千と千尋の神隠し』の上海公演も控えています。これまで初演、再演、そしてロンドン公演にご出演されてきました。今回は、初の上海公演になりますが、ロンドン公演を経て、海外での公演についての面白さ、難しさはどうお感じになっていますか?
やはり日本との違いはたくさん感じました。海外公演の難しさは、スタッフの皆さんとの感覚の違いにあると思います。日本人はやはり勤勉といいますか、休憩時間を削ってでもいいもの作りたいという思いを持っている方が多いと思いますが、海外のスタッフの方は、「とりあえず一旦、休憩しないといいもの作れない」と考えます。そうした感覚の違いに最初は戸惑いがありました。ただ、結局はどちらも「良いものを作りたい」という大きなテーマを持っているので、お互いに調和し合って良いものを作ることができました。今回は、上海なので、またロンドンとも違いますし、現地に行ってみないと分からないことだらけです。ただ、ロンドンで賞をいただき、きっと期待値が上がっていると思いますので、感覚の違いがあっても妥協なく作っていきたいと思っています。

 

―再演を重ね、同じ役柄を長く演じ続けていくことで、役への想いも強くなっているのではないですか?

演じるという点では、どの作品も同じ熱量ではありますが、リン、そして千尋の母に対しての想いは確実に強くなっていると思います。役へのこだわりもどんどん追加されています。ただ、こだわりすぎてしまっても良いものが見えなくなってしまうので、削ぎ落とさないといけないなとも考えてもいるところです。セリフ量もそれほど多いわけではないですし、歌うわけでもないのですが、一向に飽きがこない。むしろどんどんこだわっていきたくなるというのがロングランでされている方々の気持ちなのかなと感じています。掘れば掘るほどいろいろなことが見えてきているのだと思います。

 

―初めて演じたときと今では、ご自身の中でお芝居の変化は感じていますか?

全く違います。最初は勢いで演じていたところがあったと思います。私自身が、原作があるならば役者のオリジナリティのあるお芝居より原作に近いものを観たいと思うタイプなので、とにかく映画という原作に寄せようと。それが第一にあって、その上でリンはこれまでどういう生活をしてきたのか、生い立ちはどうなのかを考え始めました。見た目は変わらないかもしれないですが、根底にあるものがどんどん根が深くなっている感覚があります。それがどうエネルギーとしてお客さまに伝わっているのかは分かりませんが。

 

―再演で新たなキャストも加わりましたが、そうしたことによる化学反応もあったのでは?

それもあります。公演ごとにキャストが変わりますが、それによって自分も間(ま)やテンポ感、エネルギーの使い方が変わるので、同じお芝居をしても毎公演、変わると思います。前回は、千尋を4人の方が演じていましたが、同じ千尋を演じていても役者さんが持っているそもそもの性格やエネルギーが全然違うので、こちらの引き出し方も変わっていたと思います。

 

―今、上海公演に向けて楽しみにしていることは?

上海のお客さまの反応です。ロンドンで1番、勉強になったのがそれでした。やはり日本のお客さまとは全然違う反応で、公演中の笑いが起きるタイミング、拍手のタイミング、歓声のタイミング、カーテンコールといったものが、同じ作品でも国によってこんなにも違うんだと。演劇の自由な見方というのがどういうものなのか、私自身も勉強になりましたし、役者側もその国に合わせた演じ方をした方が良いと感じました。ロンドンでもジョン・ケアードさんに「こうしていこう」と演出をつけていただきましたが、上海のお客さまがどんなエネルギーを持って観ていただき、どう構成が変わるのか楽しみで仕方ないですね。

 

―早くも追加公演も決まりました。やはり期待値の高さを感じます。
私自身も楽しみたいと思います。ただ、今回はシングルキャストなので、体調第一です。ロンドンでも体調管理が大変でしたので、そこは特に気をつけたいと思っているところです。

 

『CLUB SEVEN another place II』


―続いて10月に上演される『CLUB SEVEN』についても聞かせてください。妃海さんは、『CLUB SEVEN ZERO III』にもご出演されていました。脚本・構成・演出・振付を担当する玉野和紀さんの作品の魅力はどういうところに感じていますか?

玉野ワールドの沼があるんですよ(笑)。一回、観劇するとその沼にドボンと落ちてしまう(笑)。私のファンの方も、前回、『CLUB SEVEN』に出演させていただいたときに初めてご覧になって、それから『CLUB SEVEN』のファンになって、私が出演しなくても観続けている方がいらっしゃいます。おじさまたちが大汗かいて青春して、最後までがむしゃらに頑張る。そんな作品です。昭和の青春がここにあります。笑いのセンスも裏切らない。こうきたら次はこうだよねと、確実な笑いがそこにあるんです。それが素晴らしいと出演をして感じました。今回、北翔海莉さんも出演されますが、歌も踊りも笑いもずば抜けていらっしゃる方なので、私もしっかりと振り切って頑張りたいと思っています。

 

―『CLUB SEVEN ZERO III』の稽古場もかなり熱気があったのでは?

熱いですよ!! 「もう一回、やるぞ!!」と昭和の部活動のようなノリでした。私は平成生まれなので、実際には昭和の部活は知らないのですが、きっとこんな空気感だったんだろうなと。汗を流して、真剣に向き合うからこそ生まれる絆が観ている方にも伝わるのだろうと思います。

 

―盛りだくさんな1年になりますね。

はい!! 自分自身の成長や新たな気づき、変化が楽しみです。お稽古をしているときが一番、自分自身の中で気づきが多いのだと思います。稽古期間に、自分の欠点やいいところを発見できます。そして、その後の本番でお客さまに気づかせてもらえる。今年はたくさんの現場でたくさんの人にお会いできるので、たくさんの気づきがある1年になるんだろうなとワクワクしています。

 

NHK連続テレビ小説「おむすび」
―NHK連続テレビ小説「おむすび」でのお芝居も印象に残っています。ぜひドラマの撮影の思い出も教えてください!
初めてのドラマ出演でしたので、まず稽古期間がないということに驚きました。現場で会って、いきなり本番。そして、違う角度から同じシーンを何度も撮影して、何度もお芝居をしたら、そのシーンは終わり。「これで終わりなんだ、今のお芝居で大丈夫なのかな」と思っていましたが、放送が始まって音楽が加わって編集された映像を観たら、完成したものが出来上がっていて驚きました。映像作品は総合芸術なのだと感じましたし、すごく感動しました。舞台では、その瞬間に全てが出来上がっている状態で、お客さんが最後のピースを埋めてくれて完成しますが、映像はいろいろな方の手が加わったものが放送されます。一瞬しか流れないシーンでもこれだけ多くの方が関わってできているのだと感じると、改めて面白いなと思いました。これからもっともっとチャレンジしていきたいと思いました。

 

―お芝居の面では、あまり映像と舞台の違いはお感じになりませんでしたか?
お芝居ではそれほど違いは感じませんでした。舞台では物語の冒頭から展開していくので感情は作りやすいですが、でも、その場面が終わったら袖にハケるので集中力という意味では私はあまり変わりません。映像のお芝居でもそのシーンの前後がどういう状況なのかを自分が把握していれば、それほど混乱することもありませんでしたし、そう考えると、お芝居という意味では同じかなと。ただ、ドラマでお勉強になったのが、その集中力の作り方です。一瞬でカチッと作る。瞬発力や集中力を鍛えることができる現場だと感じました。

 

―なるほど。朝ドラに出演したことで、周りの方の反響も大きかったのはないですか?
嬉しかったのが、「朝ドラに出ていますよね?」とか「(役名の)桑原さんですか?」と声をかけられるようになったことです。ただ、朝ドラに出演している姿と私が一致しないということも起こっています。舞風りらさんから「ずっと(朝ドラを)観ていたけれど、気づかなかった」と言われました(笑)。それくらい気づかれなかったんです。それは良いような、寂しいような(笑)。ありがたいですが。

 

―たくさんのお話、ありがとうございました!! 最後にファンの方にメッセージをお願いします!!
いろいろな私をお見せできるように、その瞬間、瞬間、全力投球で頑張っていきたいと思います。健康に気を付けて、笑顔で皆さまにお会いできるよう頑張りますので、皆さまもどうか健康に気を付けて観にいらしてください。


▶︎妃海風さんのファッション事情◀︎
―今日のお衣裳のポイントは?
今日は「春到来」をテーマに、華やかなワンピースにしました。春が好きなんです。大好きなピンクのものがたくさん販売されるので、お洋服も春色にして、気持ちも春色でいきたいと思っております。

 

―最近買ったお気に入りのファッションアイテムは?
最近はくすみカラーが流行っていますが、ショッキングピンクのカーディガンを買いました。やっぱり私はパキッとした色が好きなので。インナーに「ウィキッド」のTシャツを着ると、「ピクニックや花見に行こう!」という気持ちになります。カジュアルでパキッとした春色のアイテムが今の私の気分です。軽快に動ける女性のイメージで着たいと思います。

 

―最近の美容のオススメは?
Yunthの生ビタミンCはお化粧前にお肌に塗ると本当に調子が良くて気に入っています。くすみも取れるので、定期購入しています。

 

【profile】
妃海風/Fu Hinami
大阪府出身。2009年宝塚歌劇団に入団、星組に配属される。『南太平洋』など数々の作品でヒロインを務める。2015年5月星組トップ娘役に就任後、同年8月大劇場お披露目公演『ガイズ&ドールズ』に出演。2016年11月『桜華に舞え/ロマンス!!(Romance)』の東京公演千穐楽をもって、宝塚歌劇団を退団。退団後の出演作に、『江戸は燃えているか』VOICARIONⅡ『GHOST CLUB』『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』音楽劇『道(La Strada)』『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『Gang Showman』など。2019年にはディナーショー、コットンクラブライブを総合演出し開催。2022年には帝国劇場にて上演の舞台『千と千尋の神隠し Spirited Away』へ出演し、2024年同作ロンドン公演へ出演、2025年の上海公演への出演を控えている。
▪️公式Instagram

https://www.instagram.com/fuhinami_official/

▪️オンラインサロン妃海風 愛され♡コミュサロン

https://lounge.dmm.com/detail/6100/
◾️妃海風ファンクラブlove it!

https://hinamifu-loveit.bitfan.id/


【公演概要】
■EXPO2025『未来へのOne Step!〜世界を結ぶ愛の歌声〜』
大阪・関西万博:2025年4月29日(火)〜5月1日(木) EXPOホール「シャインハット」
東京公演:2025年5月17日(土)〜5月20日(火) 東京国際フォーラム ホールC
大阪公演:2025年5月25日(日)〜5月27日(火) 梅田芸術劇場 メインホール

 

■ミュージカル『Play a Life』10周年記念キャスト公演
2025年5月21日(水)〜5月23日(金) 銀座・博品館劇場

 

■舞台『千と千尋の神隠し』
2025年7月14日(月)〜8月17日(日) 上海文化広場

 

■『CLUB SEVEN another place II』
東京公演:2025年10月4日(土)〜10月14日(火) 有楽町よみうりホール
大阪公演:2025年10月24日(金)〜10月25日(土) サンケイホールブリーゼ

(2025,04,25)

photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Maki Shimada

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